ピッキングリストは、倉庫から出荷商品を正確に集めるために欠かせない指示書です。しかし、「出荷指示書や納品書と何が違うのか」などと疑問に感じる方もいるでしょう。
また、リストを作成しただけでは、ピッキングミスや無駄な移動が必ず減るとは限りません。商品の識別方法やロケーション、ピッキング順など現場の運用まで含めて見直すことが重要です。
本記事では、ピッキングリストの意味や種類、記載項目、E作成方法に加え、ピッキングリストを活用するポイントまで解説します。
目次
ピッキングリストとは
まず、ピッキングリストの意味と、混同されやすい帳票との違いを解説します。
ピッキングリストの意味
ピッキングリストとは、出荷に必要な商品を倉庫から取り出す「ピッキング作業」で使用する指示書です。
ピッキングとは、受注内容や出荷指示に基づき、倉庫に保管されている商品の中から発送する商品を集める作業を指します。商品の出荷では、その後に検品や梱包(こんぽう)などの工程が続くため、必要な商品を正確に取り出すことが重要です。
ピッキングリストは、作業者が出荷のたびに注文内容を確認したり、記憶を頼りに商品を探したりするのではなく、決められた指示に沿って作業を進めるために使用します。これにより、担当者の経験や知識だけに頼らず、一定の手順でピッキングを進められます。
なお、ピッキングリストに記載する具体的な項目や作成方法については、後ほど詳しく解説します。
ピックリストとの違い
物流や倉庫業務において、「ピックリスト」と「ピッキングリスト」は基本的に同じ意味で使われます。いずれも、出荷などに必要な商品を保管場所から取り出す際に、作業者が確認するリストを指す言葉です。
呼び方は企業や現場、使用するシステムなどによって異なり、「ピックリスト」と表記される場合もあれば、「ピッキングリスト」と表記される場合もあります。そのため、物流業務の文脈では、両者を別の帳票として区別する必要は基本的にありません。
出荷指示書との違い
出荷指示書とピッキングリストの違いは、出荷業務のどこまでを指示する書類なのかにあります。
出荷指示書は、受注した商品を出荷するために必要な情報を関係者へ伝える書類です。商品の種類や数量だけでなく、届け先などを含め、出荷に必要な情報をまとめる役割があります。
対してピッキングリストは、出荷工程のうち「倉庫から商品を集める作業」に焦点を当てたものです。
つまり、出荷指示書は出荷業務を開始するための指示、ピッキングリストはその指示を倉庫内の具体的な作業につなげるための帳票と考えると、両者の役割を区別しやすいでしょう。
なお、帳票の名称や使い分け方に統一されたルールがあるわけではなく、企業によっては出荷指示書をピッキングにも使用する場合があります。
納品書との違い
納品書とピッキングリストでは、書類を使用する相手と目的が異なります。
納品書は、納品した商品の内容を取引先や購入者に知らせるための書類です。一般的には商品と一緒に送付し、商品名や数量などを記載することで、注文した内容と実際に届いた内容を確認できるようにします。
一方、ピッキングリストは顧客へ渡すための書類ではなく、商品を出荷する側が倉庫内の作業で使用するものです。
どちらにも商品名や数量など共通する情報が含まれることがありますが、納品書は「納品内容を相手に伝えるもの」、ピッキングリストは「出荷前の商品を集める作業に使うもの」という違いがあります。
ピッキングリストの種類
ピッキングリストは、採用するピッキング方式に合わせて作成します。代表的な方式には、注文単位で商品を集める「シングルピッキング」と、複数の注文分をまとめて集める「トータルピッキング」があります。
シングルピッキングリスト
シングルピッキングリストは、注文ごとに必要な商品をピッキングする場合に使用するリストです。シングルピッキングは「摘み取り方式」「オーダーピッキング」とも呼ばれます。
例えば、注文Aに商品Xと商品Y、注文Bに商品Xが含まれている場合、それぞれの注文に必要な商品を個別に集めます。ピッキングの段階から注文単位で商品を扱うため、集め終わった商品を別の注文へ振り分ける工程が基本的に発生しません。
一方、注文の数だけ商品を取りに行く必要があるため、出荷件数が増えると倉庫内の移動も増えやすくなります。そのため、シングルピッキングは、出荷件数が比較的少なく、取り扱う商品の種類(SKU数)が多い場合などに適しています。
なお、SKUとは、サイズや色などの違いを含めて在庫を管理する最小単位のことです。例えば、同じTシャツでも「白・Mサイズ」と「白・Lサイズ」を別々に在庫管理している場合は、それぞれ1SKUとして数えます。
トータルピッキングリスト
トータルピッキングリストは、複数の注文で必要となる商品を合算し、まとめてピッキングする場合に使用するリストです。トータルピッキングは「種まき方式」などとも呼ばれます。
例えば、注文Aで商品Xが1個、注文Bで商品Xが2個必要な場合は、商品Xを合計3個まとめて取り出し、その後、それぞれの注文に振り分けます。
同じ商品の保管場所へ注文のたびに移動する必要がないため、倉庫内の移動を減らしやすいことがメリットです。一方、ピッキング後には注文別に商品を仕分ける工程が必要になります。
そのため、トータルピッキングは、出荷件数が多く、取り扱う商品の種類(SKU数)が比較的少ない場合などに適しています。
ピッキングリストに記載する項目
ピッキングリストに記載する内容は、取り扱う商品やピッキング方法、倉庫の運用によって異なります。全ての情報を載せるのではなく、作業者が対象の商品を正しく判断するために必要な情報を選ぶことが重要です。ここでは、ピッキングリストに記載される主な項目を紹介します。
商品を特定する情報
商品名や商品コード、SKU、JANコードなど、どの商品を取り出すのかを特定するための情報です。
特に、同じ商品に色やサイズ、容量などのバリエーションがある場合は、商品名だけでは対象を判断しにくいことがあります。商品コードなども併記することで、取り出す商品を区別できます。
JANコードとは、商品を識別するために使われるコードで、日本では一般的に商品パッケージなどに表示されているバーコードに利用されています。同じような名称や外観の商品を扱う場合も、JANコードを確認することで商品を識別できます。
なお、SKUについては前述したとおり、在庫を管理する最小単位を指します。
ピッキング数量
出荷のために取り出す数量を記載します。
ここで注意したい点が、採用するピッキング方式によって数量の意味が変わることです。シングルピッキングでは基本的に1件の注文で必要となる数量を示します。一方、トータルピッキングでは、複数の注文で必要となる商品をまとめて集めるため、対象となる注文分を合算した数量を示します。
同じ「数量」という項目でも、どの単位で集計された数字なのかを作業者が判断できることが重要です。
ロケーション
ロケーションは、対象の商品が倉庫内のどこに保管されているのかを示す情報です。棚番号やエリア番号などが該当します。
商品名や数量が分かっていても、保管場所がリストから判断できなければ、作業者自身が商品を探さなければなりません。
ロケーションを記載することで、商品の保管場所を熟知していない作業者でも、指定された場所へ向かいやすくなります。
注文・出荷に関する情報
必要に応じて、注文番号や出荷番号、発行日、出荷先などの情報も記載します。
特にシングルピッキングでは注文単位で作業するため、集めている商品がどの注文に対応するものなのかを識別できる情報が重要です。
また、同じ商品について複数の出荷指示が並行している場合にも、注文番号などがあれば対象となる指示を区別しやすくなります。
ただし、出荷に関する全ての情報をピッキングリストへ載せる必要があるわけではありません。実際の作業で識別に必要となる情報を選んで記載します。
バーコードなどの照合情報
商品や注文を識別するために、バーコードなどの情報をピッキングリストに記載する場合もあります。
例えば、商品コードを文字だけで表示するのではなくバーコードとして表示しておけば、対応する機器を使用する運用で読み取りに利用できます。
ここで重要な点は、商品コードやJANコードなどの「商品を特定する情報」と、バーコードという「情報を読み取れる形にしたもの」を混同しないことです。JANコードなどの識別情報をバーコードとして表示し、照合に利用するケースがあります。
ピッキングリストを作成する方法
ピッキングリストの作成方法は、大きく分けるとExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使う方法と、在庫管理システムやWMSなどから出力する方法があります。どちらが適しているかは、単純な出荷件数だけで決まるものではありません。商品情報や保管場所の変更頻度、複数人での作業の有無なども踏まえて選ぶことが重要です。
Excel・スプレッドシート
出荷規模がそれほど大きくない場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートでもピッキングリストを作成できます。
商品コードや数量などを入力し、商品名やロケーションを商品マスターから参照するように設計しておけば、全ての情報を毎回手入力する必要はありません。関数を利用して必要な情報を呼び出したり、商品ごとの数量を集計したりすることで、作成作業を効率化できます。
リストの形式は、採用するピッキング方法によって変わります。シングルピッキングでは注文単位で必要な商品を確認できるようにし、トータルピッキングでは複数の注文をまとめて商品ごとの必要数量を把握できるようにします。
ただし、表計算ソフトを使う場合、リストを自動化しても、その元となるデータの管理まではなくなりません。新商品の登録や棚の移動があれば、商品マスターやロケーション情報にも反映する必要があります。
在庫管理システム・WMS
取り扱う商品や出荷件数が増え、表計算ソフトでの管理が煩雑になってきた場合は、在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)を利用する方法があります。
こうしたシステムでは、受注情報や商品情報、在庫、ロケーションなどのデータを利用して、出荷対象に応じたピッキング指示を作成できます。注文内容を確認してリストへ転記したり、複数の注文から必要数量を手作業で集計したりする工程を減らせる点が特徴です。
さらに、システムによっては、ピッキングリストを紙に印刷する運用だけでなく、ハンディターミナルなどへ作業指示の表示もできます。
つまり、システム導入を検討する基準は、単に「Excelでは作れなくなったか」ではありません。リスト作成・商品情報の更新・在庫やロケーションの管理などが分断され、同じ情報を何度も入力・確認する状態になっているかを見ることがポイントです。
ピッキングリストを活用するポイント
ピッキングリストを作成しても、使い方が現場に合っていなければ、作業時間の短縮やミスの削減にはつながりません。ここでは、ピッキングリストを日々の作業改善につなげるポイントを紹介します。
作業者が迷った箇所を記録する
ピッキングリストを改善するときは、「見やすくする」といった感覚的な修正ではなく、実際に作業者が止まった場所を把握することが重要です。
例えば、特定の商品だけ探す時間が長い、同じ棚で取り違えが続く、数量確認で何度もリストを見直しているといった状況があれば、そこには改善すべき原因があります。
「商品が分かりにくい」「場所が分からない」「数量の読み取りに迷う」など、作業中に発生した迷いを記録すれば、商品情報、ロケーション、表示方法のどこを見直すべきかを具体的に判断できます。
リストを定期的に作り直すことよりも、現場で発生した迷いを次の改善に反映する仕組みを持つことが重要です。
ピッキング順と実際の動線が合っているか確認する
ロケーションをリストに記載していても、掲載順が実際の移動経路と合っていなければ、同じ通路を何度も往復することがあります。
例えば、「Aエリア→Cエリア→Aエリア」と移動する順番になっている場合、商品そのものの配置を変えなくても、リスト上の並び順を変更するだけで移動を減らせる可能性があります。
また、売れ筋商品が変わると、以前は効率的だった順番が現在の出荷状況に合わなくなることもあります。
そのため、ロケーション情報が正しいかだけでなく、リストを上から処理したときに無駄な移動が発生していないかまで確認することが大切です。
作業者ごとの差から暗黙知を見つける
同じピッキングリストを使っているのに、ベテランと新人で作業時間に大きな差がある場合は、リストに書かれていない判断をベテランが経験で補っている可能性があります。
例えば、「この商品は似た箱が隣にあるので品番まで確認する」「この棚が空なら予備在庫を確認する」といったルールを、ベテランだけが知っているケースです。こうした知識を個人の経験のままにしておくと、担当者が変わるたびに作業品質が変わります。
作業の速い人がどこで何を判断しているのかを確認し、必要な内容はリストや作業ルールに反映します。「新人をベテランに近づける」のではなく、「ベテランしか知らない判断を減らす」という視点で見直すと、作業の標準化につながります。
ミスが起きた工程ごとに対策を分ける
誤出荷が発生したときに、全てを「確認不足」として処理すると、同じミスが繰り返される可能性があります。
例えば、よく起こるミスは次のとおりです。
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商品そのものを間違えた
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数量を間違えた
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別の注文の商品と混ざった
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正しい商品を取ったが、その後の仕分けで間違えた
商品を間違えるのであれば識別方法、数量間違いなら確認方法、トータルピッキング後の混在なら仕分け工程を確認する必要があります。
そのため、ミスが発生した際は「誰が間違えたか」ではなく、どの工程で・どの判断がずれたのかを記録します。ピッキングリストだけで解決できる問題なのか、作業手順や照合方法まで見直す必要があるのかを切り分けることで、再発防止につなげられます。
ピッキングリストに関するQ&A
最後に、よくあるピッキングリストに関するよくある質問とその回答を紹介します。
ピッキングリストに決まったフォーマットはあるか
ピッキングリストには、法律で定められた統一のフォーマットはありません。そのため、取り扱う商品や倉庫の運用、ピッキング方法などに合わせて、自社で使いやすい形式を設定できます。
ただし、自由に作成できるからといって、必要な情報まで省いて良いわけではありません。商品を識別する情報、数量、ロケーションなど、作業者がピッキングを行うために必要な情報は盛り込む必要があります。
そのため、既存のテンプレートをそのまま使うよりも、自社の商品特性や作業方法に合わせて項目や並び順を調整することが重要です。
ピッキングリストとデジタルピッキングは何が違うか
ピッキングリストとデジタルピッキングの大きな違いは、作業者がピッキング対象を確認する方法です。
ピッキングリストを使う場合は、リストに記載された商品やロケーション、数量を作業者が確認し、該当する保管場所へ移動して商品を取り出します。
一方、デジタルピッキングでは、商品の保管場所に設置したデジタル表示器を使って、ピッキングする場所や数量を作業者に知らせます。例えば、対象となる棚の表示器が点灯し、必要な数量が表示される仕組みです。デジタルピッキングシステムは「DPS(Digital Picking System)」とも呼ばれます。
つまり、紙かデジタルかという単純な違いではありません。作業者がリストから保管場所を読み取って探すのか、設備側が対象となる場所を直接示すのかという違いがあります。
なお、デジタルピッキングとは別に、商品を出荷先ごとに仕分ける作業を支援する「DAS(Digital Assort System)」もあります。DPSとDASでは支援する作業が異なるため、導入時には自社のピッキング・仕分け方法に合った仕組みを選ぶことが重要です。
ピッキングリストにはロット番号も記載した方が良いか
全ての商品でロット番号が必要なわけではありません。ロット単位で商品を管理している場合などに、必要に応じて記載します。
例えば、商品名や品番が同じでも「どの製造ロットから出荷するか」が指定されている場合、商品だけを確認しても正しいピッキングとはいえません。対象となるロットまで識別できる情報が必要です。
そのため、ピッキングリストの項目は商品数だけで決めるのではなく、自社が在庫をどの単位まで区別して管理しているかを踏まえて設定することが重要です。