Shopifyでのチャットボット活用は、単なる問い合わせ対応の自動化にとどまらず、顧客体験を向上させ、売り上げアップや業務効率化にも直結する重要な取り組みです。
チャットボットには「ルールベース型」「AI型」「有人チャット連携型」などいくつかの種類があり、それぞれの特徴や得意分野を理解した上で、自社ストアに最適な仕組みを選ぶことが重要です。
本記事では、チャットボットそのものの基本的な仕組みから、Shopifyストアで導入する際の具体的なメリット・注意点、さらにおすすめアプリまで詳しく解説します。多様化する顧客ニーズに応える柔軟なサポート体制を整えたい方や、24時間365日対応・多言語対応を強化したい方、マーケティング施策に生かしたい方にも役立つ情報を網羅しています。
ぜひ自社の運営状況に合わせた最適なチャットボット活用の参考にしてください。
目次
チャットとは
チャットボットの種類
Shopifyにチャットボットを導入するメリット
Shopifyにチャットボットを導入するデメリット・注意点
Shopifyチャットボットのおすすめアプリ
チャットとは
チャットとは、テキストによる対話を通じてコミュニケーションを行う仕組みを指します。
大きく分けると「有人型」と「無人型」の2種類があります。有人型は一般的に「ウェブチャット」や「チャット」と呼ばれ、オペレーターが直接ユーザーに対応します。一方、無人型は「チャットボット」と呼ばれます。
「チャットボット」は「チャット(対話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、人間に代わり自動でテキストによる会話を行うプログラムを意味します。ウェブサイトやアプリ上で顧客対応を効率化するために広く活用されています。
さらにチャットボットは、大きく三つの種類に分類できます。それぞれに特徴や得意な活用シーンがあり、ShopifyなどのECサイト運営でも効果的に活用するためには違いを理解しておくことが重要です。
チャットボットの種類
チャットは大別すると次の3種類に分けられます。
それぞれの種類の特徴とメリット・デメリットを紹介します。
シナリオ型
シナリオ型は、事前に決められたルールやシナリオに沿って顧客対応を行う仕組みです。例えば、よくある問い合わせに対して定型的な回答を提示するFAQチャットボットが代表例です。
運用コストが比較的低く、導入も容易である一方、想定外の質問には柔軟に対応できないという制約があります。そのため、問い合わせ内容が限定的な業種や、サポートの一次対応として利用されることが多いです。
AI型
AI型は、機械学習や自然言語処理を用いて、顧客の質問に合わせて柔軟に回答を生成する仕組みです。
過去のやり取りやデータを学習し続けることで精度が向上し、複雑な質問にも対応できる点が特徴です。
ユーザーの入力内容を理解し、最適な回答を導き出すため、より自然なコミュニケーションが実現します。ただし、初期学習やチューニングにコストがかかること、業種によっては専門知識の学習に時間を要する点が課題です。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、チャットボットによる自動応答とオペレーターによる有人対応を組み合わせた仕組みです。日常的な問い合わせやFAQはボットが効率的に処理し、より複雑な内容や重要度の高い相談は自動的にスタッフへ引き継ぐことで、顧客体験の質を損なうことなく業務効率化を図れます。
効率性を保ちながら人の判断も加わるため、顧客満足度を高めやすい点がメリットです。一方で、オペレーターの配置や教育、シフト管理が必要となり、完全自動型より運用コストが高くなる点が課題です。
Shopifyにチャットボットを導入するメリット
Shopifyストアにおけるチャットボット活用は、単なる問い合わせ対応だけにとどまらず、売り上げや顧客満足度、ブランド価値の向上に大きな役割を果たします。
Shopifyでチャットボットを使用するメリットは、次のとおりです。
- 顧客対応の効率化とコスト削減
- 顧客体験の向上
- コンバージョン率向上
- マーケティングデータの活用
- ブランド価値の向上
それぞれを詳しく解説します。
顧客対応の効率化とコスト削減
Shopifyにチャットボットを導入する最大のメリットは、サポート業務の効率化です。
注文状況や送料、返品ポリシーといった定型的な質問に24時間365日自動で応答でき、営業時間外や繁忙期でも顧客の不安を即座に解消します。これにより、対応遅延による機会損失を防げます。
また、FAQや注文確認といった定型業務を自動化することで、サポートスタッフはより複雑な相談やクレーム対応に専念できます。結果として人件費を抑えつつ、リソースを最適に配分でき、組織全体の生産性向上につながります。
顧客体験の向上
チャットボットは「すぐに回答が得られる」という安心感を提供し、顧客体験(CX)の改善に直結します。
FAQページを探す手間が省けることで利便性が高まり、「対応が早い信頼できるショップ」という印象を持ってもらいやすいです。
さらに、有人チャットとのスムーズな切り替えや多言語対応を組み合わせることで、幅広い顧客層に柔軟に対応できます。越境ECや訪日客を対象としたストアでも、24時間いつでもサポートを受けられる環境が整うため、満足度の向上とリピーター獲得に効果的です。
コンバージョン率の向上
チャットボットは、購入検討中の顧客に適切なタイミングで提案を行い、購入を後押しする役割も果たします。
例えば、「この商品にはこのアクセサリーがおすすめです」や「今なら10%オフクーポンが使えます」といった案内をリアルタイムで行うことで、カート放棄を防ぎ、コンバージョン率を高める効果が期待できます。
マーケティングデータの活用
チャットボットは単なる問い合わせ窓口にとどまらず、顧客の行動データや会話ログを収集できる貴重なツールです。
よくある質問や人気商品、関心の高いカテゴリーを把握することで、商品企画やマーケティング施策の改善に役立ちます。
さらに、顧客セグメントごとにパーソナライズしたメッセージを発信すれば、より効果的なプロモーションが可能です。
ブランド価値の向上
チャットボットは「無機質な自動応答」ではなく、ブランドの世界観や個性を表現できる接客チャネルでもあります。
フレンドリーな言葉遣いやブランドキャラクターによる会話などを取り入れることで、顧客に「このブランドらしい体験」と感じてもらえます。
こうしたブランドの人格化は、単なるFAQ対応を超えたマーケティング効果を持ち、記憶に残る購買体験を提供します。特にD2Cブランドや世界観を重視するECサイトにとっては、重要な差別化ポイントです。
Shopifyにチャットボットを導入するデメリット・注意点
Shopifyにチャットボットを導入する際の主なデメリットや注意点は次のとおりです。
- 複雑な質問への対応
- 初期設定やメンテナンス負担
- 企業イメージへの影響
- 過剰な自動化による信頼低下
それぞれを解説します。
複雑な質問への対応
チャットボットはあらかじめ設定したFAQや一般的な質問への回答には非常に有効ですが、想定外の問い合わせや状況依存の複雑な相談には対応しきれない場合があります。
例えば、返品・交換に関する個別事情や、カスタムオーダーへの詳細な対応など、柔軟な判断が必要なやりとりでは限界があります。
このようなケースでは、チャットボットが「回答不能」で終わらないように、すぐに有人スタッフへスムーズに引き継ぐ仕組みを整えておくことが重要です。
初期設定やメンテナンス負担
導入時にはシナリオ設計や回答設定といった構築作業が必要で、特にルールベース型では多くのQAを網羅しなければなりません。
さらに運用後も商品の入れ替えやFAQ更新に応じた定期的なメンテナンスが不可欠です。
放置すれば誤回答や古い情報によって顧客満足度を損なうリスクがあります。
企業イメージへの影響
チャットボットは顧客との最初の接点となるため、その品質やトーンがショップ全体の印象を左右します。
形式的すぎる応答は「冷たい」「機械的」と受け取られる一方、ブランドらしい言葉遣いやキャラクター設定を行えば好印象につながります。
単なる機能ではなく、ブランドを体現する接客ツールとして設計することが重要です。
過剰な自動化による信頼低下
チャットボットの自動応答は便利ですが、全自動化を追求しすぎると顧客が「人間に相談できないストア」と感じてしまい、かえって信頼を失ってしまいます。
顧客が希望する場面では必ず有人対応へ切り替えられるエスカレーションルールを設け、解決できなかった場合にはスタッフが迅速にフォローできる体制を整えることが必要です。
Shopifyチャットボットのおすすめアプリ
Shopifyの標準機能にはチャットボットは備わっていないため、外部アプリの利用が必要です。Shopifyにチャットボットを導入する際のおすすめのアプリは次のとおりです。
- Shopify Inbox(Shopify公式アプリ)
- Tidio
- Willdesk
- Omakase.ai
- Gorgias
それぞれのアプリの特徴を紹介します。
Shopify Inbox(Shopify公式アプリ)

Shopify Inboxは、Shopifyが公式に提供する無料のチャットツールです。
管理画面とシームレスに連携し、オンラインストアやShopアプリでの会話を一元管理できます。チャット中に顧客のプロフィールや閲覧履歴、カート追加商品、過去の注文内容をリアルタイムで確認でき、その場でおすすめ商品や割引の提案も可能です。
さらに、あいさつメッセージやFAQ回答、連絡先の収集を自動化できるほか、クイック返信や即時回答を数クリックで設定できるため、効率的かつスピーディーな対応が実現します。
こうした仕組みにより、高い購入率を維持しながら売り上げアップへ直結させやすい点が大きな魅力です。
Tidio

Tidioは、Shopifyに特化したヘルプデスク型チャットアプリで、チャットボット・AIエージェント・有人チャットを一つに統合して提供します。
訪問者がサイトを閲覧中に、設定したメッセージを送ったり、ライブチャットで直接会話が可能です。さらに、会話型AIを活用してパーソナライズ提案やアップセルを行い、割引コード提示などを通じて平均注文額を高められます。
また、専用のShopify機能を備えた一元管理型ヘルプデスクとして、カート内容や閲覧商品、注文履歴をリアルタイムで把握できる点も特徴です。
料金プランは無料プランの他、月額29ドルの「Customer Service」と「Flows」、月額39ドルの「Lyro AI Chatbot」があり、有料プランでは7日間の無料体験が利用可能です。
Willdesk

Willdeskは、GPT-4を活用したAIヘルプデスクアプリです。AIエージェントが注文追跡・返品・キャンセル・住所変更などに即時対応し、24時間365日サポートを自動化します。
メールやライブチャット、Instagram・Messenger・WhatsAppなどのSNSを統合したチケットシステムで、顧客対応を一元管理可能です。さらに、Smart Workflow Builderによりカート回復やFAQ即時回答などの自動フローを構築できます。
ShopifyやParcelPanelなどのサービスと連携し、追跡アプリ不要で配送状況を管理できます。ブランドに合わせたFAQページやセルフサービスウィジェットも提供でき、顧客満足度と業務効率の両立を実現します。
料金プランは無料プランの他、月額16.90ドルの「スタータープラン」と月額42.90ドルの「ベーシックプラン」、月額149.90ドルの「プロフェッショナルプラン」があり、有料プランでは7日間の無料体験が利用可能です。
Omakase.ai

Omakase.aiは、ブランド専用の音声AIショッピングエージェントを簡単に作成できるアプリです。ショップのURLを入力するだけで商品情報を取り込み、数分でAIエージェントを構築できます。
このAIはまるで店頭スタッフのように会話しながら、商品比較やおすすめ提案、質問対応をリアルタイムで実施します。顧客体験を向上させ、コンバージョン改善やサポート負担の軽減を実現します。
さらに、会話データ分析によって顧客インサイトを把握でき、売り上げ拡大につなげられます。
料金プランは月額19ドルの「Intern」と月額99ドルの「Associate」、月額399ドルの「Principal」があります。
Gorgias

Gorgiasは、Shopifyと連携するヘルプデスク型アプリで、全ての顧客とのやり取りを一元管理できるプラットフォームです。メール、チャット、SNS、音声、SMSといった複数のチャネルをまとめ、対応時間を短縮しながらサポートチームの効率を高めます。
AIが注文状況の更新や返金、サブスクリプション管理を自動化するため、スタッフは顧客とのパーソナルなやり取りに集中できます。さらに、FAQや注文管理機能で顧客自身がセルフサービス対応できる他、AIによるブランドトーンでのチケット解決も可能です。
料金プランは月額10ドルの「Starter plan」と月額60ドルの「Basic plan」、月額360ドルの「Pro plan」、月額900ドルの「Advanced plan」があります。全有料プランで7日間の無料体験が利用可能です。