Shopifyで運営していると、「毎日の作業をもっと効率化できないか?」と感じることはありませんか。
そんな悩みを解決できるツールが「Shopify Flow」です。コードを書かずにワークフローを構築し、条件に応じてさまざまな処理を自動実行できます。
本記事では、Shopify Flowの仕組みやできること、メリット・注意点までを分かりやすく解説します。
目次
Shopify Flowとは
Shopify Flowは、Eコマース運営における手作業を減らし、効率的なビジネス運用を実現するための自動化ツールです。ここでは、Shopify Flowの概要や利用できるプラン、基本用語について解説します。
Shopify Flowの概要

Shopify Flowは、Shopifyが提供するEコマースのオートメーションプラットフォームです。受注処理や在庫管理、顧客対応などの定型作業を自動化し、日々の業務を効率化できます。
Eコマースのオートメーションプラットフォームとは、オンラインビジネスで発生するタスクやプロセス、キャンペーンを自動で実行する仕組みのことです。オートメーションプラットフォームにより、リソースを増やさずに多くの業務をこなせます。
Shopify Flowは、Shopify App Storeから無料でインストールできます。
Shopify Flowのプラン要項
Shopify Flowは、Basic・Grow・Advanced・Shopify Plusの各プランで利用できます。
これまで利用できるのは上位プランのみでしたが、2023年7月よりBasicプランからも利用できるようになりました。
ただし、主要な自動化機能は全てのプランで利用できますが、一部の高度な機能は上位プランに限定されています。例えば、Grow・Advanced・Shopify Plusプランのストアでは、HTTPリクエスト送信アクションが使用でき、外部サービスとの連携が可能です。また、Shopify Plusでは、カスタムパートナーアプリで作成されたタスクを実行できます。
また、プランによってAPI制限が異なるため、Flowの処理数や速度にも差が生じる場合があります。
Shopify Flow活用時に知っておきたい用語
Shopify Flow活用時に知っておきたい用語は、次のとおりです。
- ワークフロー
- トリガー
- 条件
- アクション
- コネクター
ワークフローとは、業務の流れを自動化するための一連の仕組みです。例えば「注文が入ったら顧客にタグを付ける」など、特定のイベントをきっかけに設定した処理を自動で実行する処理の流れを定義したものがワークフローです。
トリガーとは、ワークフローの動作を開始させる「きっかけ」となるイベントのことです。Shopifyストア内や連携アプリで発生する出来事を基に自動処理がスタートします。例えば「新しい注文が作成された」「商品在庫が一定数を下回った」といった状況がトリガーです。
条件とは、設定した基準を基にアクションを実行するかどうかを判断する仕組みです。トリガーによって発生したイベントの内容や、注文・顧客・商品などの情報を照らし合わせて処理の分岐を行います。例えば、「注文金額が200ドルを超えている場合のみ次のアクションを実行する」といった判定が条件にあたります。
アクションは、条件を満たした際に実際に行われる処理です。具体的には、「注文にタグを付ける」「フルフィルメントを保留にする」などがアクションの例です。
コネクターは、Shopify Flowと他の外部アプリやサービスをつなぐ連携機能です。SlackやGoogle Sheetsなどの外部ツールと接続し、ワークフローの一部として操作を実行できます。
Shopify Flowのメリット
Shopify Flowのメリットは、次のとおりです。
- 工数と人的コストを大幅に削減できる
- ノーコードで簡単にワークフローを自動化できる
- 人的ミスを防ぎ運営の正確性を高められる
- 顧客体験とリピート率を向上できる
- Shopifyアプリや外部サービスと連携して施策を拡張できる
それぞれを詳しく解説します。
工数と人的コストを大幅に削減できる
Shopify Flowを導入する最大のメリットは、これまで人手で行っていた日常業務を自動化できる点にあります。
顧客へのタグ付けや在庫の通知など、定型的な処理の自動化で、手作業にかかっていた時間を大幅に削減可能です。
スタッフの負担が軽減され、マーケティング施策や販売戦略など、より付加価値の高い業務に集中できます。
ノーコードで簡単にワークフローを自動化できる
Shopify Flowは、プログラミングの知識がなくても使えるノーコード自動化ツールです。
トリガー・条件・アクションを組み合わせるだけで、自動化ルールを簡単に設定できます。直感的なUIで操作できるため、専門知識がなくてもすぐに導入・運用が可能な点もメリットの一つです。
他のECプラットフォームで必要なカスタム開発を行わずに済み、作業の手軽さからスタッフ全員が業務自動化を活用しやすい環境を整えられます。
人的ミスを防ぎ運営の正確性を高められる
Shopify Flowを活用すれば、タグ付けや在庫更新などの手作業で起こりやすい入力ミスや更新漏れを防止できます。
自動処理によって在庫超過販売や誤ったキャンペーン適用を防ぎ、顧客からの信頼を損なわない正確な運営が可能です。
さらに、データの整合性が常に保たれるため、安定したストア運営体制を構築でき、ミスの少ないスムーズな業務フローを実現できます。
顧客体験とリピート率を向上できる
Shopify Flowでは、顧客の行動に合わせた自動対応が可能です。
例えば、カゴ落ちメールの送信やリマインド通知の自動化で、購入機会を逃さずフォローできます。さらに、タグ管理によって顧客属性に応じたパーソナライズ施策を実施し、より最適なタイミングでクーポン配布やメール配信を行えます。
これにより、顧客満足度や再購入率の向上につながり、一貫したブランド体験の提供が可能です。
Shopifyアプリや外部サービスと連携して施策を拡張できる
Shopify Flowは、Shopify内のアプリや外部サービスとの連携で、自動化の範囲を大きく広げられる点もメリットの一つです。
例えばマーケティングツールと組み合わせれば、顧客の行動や条件に応じたメール配信を自動化できます。また、社内ツールと接続すれば、通知や情報共有をスムーズに行えます。
条件に応じた処理を組み合わせることで、店舗の規模や業種に合わせた独自のフローを設計できる点が大きな魅力です。
Shopify Flowでできること
Shopify Flowでできることは、次のとおりです。
- 在庫管理
- 不正注文防止
- ロイヤルティーと顧客維持
- フルフィルメント管理
それぞれを分かりやすく解説します。
在庫管理
Shopify Flowでは、在庫数に応じた自動処理が可能です。
商品が一定数を下回った際に担当者へ通知したり、自動的に再発注ワークフローの実行ができます。また、在庫切れの商品をサイト上で非表示にすれば、欠品による購入ミスを防ぎ、顧客体験を損なわずに販売機会の維持が可能です。
これにより、在庫管理の精度とスピードが大幅に向上します。
不正注文防止
Shopify Flowを活用すれば、注文データを自動で分析し、リスクの高い取引を即座に検知できます。
高額注文や配送先住所の不一致、支払い情報の異常など、あらかじめ設定した条件に該当する場合には、自動的にフラグを立てて担当者に通知したり、注文の一時保留が可能です。これにより、スタッフが1件ずつ内容を確認する必要がなくなり、確認作業の手間やヒューマンエラーを大幅に削減できます。
不正取引を未然に防ぐことで、クレームや返金対応のリスクを軽減し、顧客と店舗双方にとって安心できる販売環境を構築できます。
ロイヤルティーと顧客維持
Shopify Flowでは、顧客データを基にリピーター施策や特典配信を自動化できます。
累計購入金額や注文回数、定期購入の有無といった条件を設定すれば、特定の顧客に自動でタグを付与し、キャンペーンや特典メールの配信が可能です。
例えば、一定金額以上購入した顧客に限定クーポンを送るといった対応も自動化でき、手間をかけずに継続的な関係構築を促進します。
フルフィルメント管理
Shopify Flowを使えば、注文確定後の出荷フローを自動で最適化できます。
注文内容を自動的に確認し、あらかじめ設定した条件に基づいて「保留」「出荷開始」などの処理を自動で判断可能です。
例えば、在庫状況や支払いステータスを基に出荷可否を自動判定したり、特定の商品カテゴリーだけを優先出荷する設定もできます。
Shopify Flowの使い方①テンプレートを使用する
Shopify Flowには、ワークフロー作成をサポートする150種類以上のテンプレートが用意されています。テンプレートはカテゴリー別に整理されており、在庫管理・注文処理・顧客管理・マーケティングなど、目的に応じて簡単に選択できます。テンプレートの活用で、専門知識がなくてもスムーズに自動化を始められます。
基本的な流れ
Shopify Flowでテンプレートを活用する際の基本的な手順は次のとおりです。
1. 管理画面からFlowを開く
2. テンプレートを選択する
3. 設定をカスタマイズする
4. ワークフローを有効化する
テンプレートを利用すれば、コーディングや複雑な設定に不慣れな方でも、Shopify上の業務自動化をすぐに実現できます。
活用例|支払いリマインダーの送信
ここでは例として、注文の支払期日を過ぎたお客様に自動でリマインダーを送信する設定方法を紹介します。
まずは前述の手順に沿ってテンプレート選択画面を開き、「期日後に送信された支払いリマインダー」を選択します。

次に、画面右上の [インストール] をクリックし、テンプレート内のトリガーやアクション内容を確認します。このテンプレートでは「支払期日を過ぎて1日後に通知を送信する」設定になっていますが、今回はこれを2日後に変更します。

最後に画面右上の [ワークフローをオン] をクリックすれば設定完了です。これで、支払期日を過ぎた注文がある場合に、自動でお客様へリマインドメールが送信されます。
Shopify Flowの使い方②新しいワークフローを作成する
Shopify Flowでは、テンプレートを使うだけでなく、自分で一からワークフローを設計できます。トリガー(きっかけ)・条件・アクションを自由に組み合わせることで、店舗運営に合わせた高度な自動化を実現できます。
基本的な流れ
新しいワークフローを作成する際の基本的な手順は次のとおりです。
1. Shopify Flowを開き「ワークフローを作成」→「トリガーを選択」をクリックする
2. トリガーを選択する
3. 条件とアクションを設定する
4. 内容を確認してワークフローを有効化する
例えば、特定の商品が注文されたときにSlackで通知を送る、支払期限を過ぎた注文をタグ付けするなど、柔軟なルール設定が可能です。Shopify Flowのワークフロー作成は一見複雑に見えますが、慣れるとテンプレートよりも柔軟な自動化を実現できます。
活用例|在庫不足時のメール通知を自動化する
ここでは、在庫数が一定以下になったときに、担当者へ自動でメール通知を送るワークフローの設定方法を紹介します。
まずは前述の流れに沿ってFlowを開きます。検索窓に「inventory」と入力し、トリガー一覧から 「Product variant inventory quantity changed」 を選択します。これは「在庫数が変動した際」に発動するトリガーです。

次に、トリガーの右下にある「+」をクリックし、[条件] を追加します。「変数を追加」から [Product] →[Variants] →[InventoryQuantity] を選択し、ドロップダウンから 「次のもの未満」 を選びます。次に「10」と入力すると、在庫が10個未満になった時点でアクションが実行されます(数値はストア状況に応じて調整可能です)。

次に、条件の下で「+」をクリックし、[アクション] → [Flow]  → [Send internal email] を選択し、通知を送りたいメールアドレスを入力し、件名や本文を設定します。本文には、商品名や在庫数などの変数を挿入しておくとより実用的です。

設定内容に問題がないことを確認したら、画面右上の 「ワークフローをオン」 をクリックします。これでワークフローが稼働し、在庫が指定数を下回ると自動で通知メールが送信されます。
Shopify Flowを活用する際の注意点
Shopify Flowを活用する際の注意点は、次のとおりです。
- 設定ハードルが高く、導入には知識が必要
- 設定画面が英語で操作しづらい
- テンプレートを活用しても完全自動化は難しい
- 全ての業務を自動化できるわけではない
- 継続的なメンテナンスと改善が必要
それぞれを詳しく解説します。
設定ハードルが高く、導入には知識が必要
Shopify Flowはノーコードで使えますが、「トリガー」「条件」「アクション」の構造を理解していないと、思いどおりの自動化ができません。
初めて使う際は、イベントの起点や条件を整理する必要があり、慣れるまでは設定やテストに時間がかかります。
設定ミスによる誤作動を防ぐため、事前にテスト環境で検証しましょう。
設定画面が英語で操作しづらい
Shopify Flowの画面や説明文は英語表記が中心で、日本語化は限定的です。
英語に不慣れな場合、設定内容の理解に時間がかかり、誤訳による設定ミスも起こり得ます。
翻訳ツールやブラウザー翻訳を活用しつつ、公式ドキュメントや日本語解説を参照することがおすすめです。
テンプレートを活用しても完全自動化は難しい
Flowには在庫アラートやタグ付けなどのテンプレートが用意され、導入しやすくなっています。
ただし、テンプレートは汎用設計のため、自社の運用フローに完全には合いません。
独自ルールや特典設定などではカスタマイズとテストが必要です。
全ての業務を自動化できるわけではない
Shopify Flow単体で全業務の自動化はできません。
メール配信やポイント管理などは他アプリとの併用が必要です。
Shopify Flowで対応する範囲と、他ツールに任せる範囲を明確に分けることが重要です。
継続的なメンテナンスと改善が必要
Shopify Flowで構築したワークフローは、一度作成して終わりではありません。
販売戦略や不正対策などの変化に応じて設定を見直し、定期的に最適化することで高い精度と信頼性を保てます。
例えば、キャンペーン内容の変更や新しい不正注文の傾向に合わせて、ワークフローの更新が大切です。