Shopifyでは2024年5月から、一部プランで月額利用料を日本円で支払えるようになりました。これにより、為替レートの変動を気にせず安定した料金で利用できます。
しかし「結局どっちがお得なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、円払いとドル払いのどちらがよりお得なのかを、為替レート別の比較表や実際のシミュレーションを交えて詳しく解説します。
また、クレジットカード会社の基準レートや海外手数料、設定方法、注意点まで網羅的に紹介します。Shopifyの支払い通貨を見直したい方は必見です。
目次
Shopifyの円建て支払いとは
2024年5月以降、Shopifyでは一部のプランで日本円による月額利用料の支払いが可能になりました。ここでは、円建て支払いの仕組みと対象プランについて解説します。
現地通貨支払いの仕組み
Shopifyの請求は、会計上の理由から原則として米ドルで発行されますが、サポート対象国のマーチャントは現地通貨で支払いができます。対象国は日本の他、オーストラリア、カナダ、イギリス、欧州連合加盟国、インド、シンガポールなどです。
現地通貨請求を選ぶことで、為替手数料の支払額を抑えられ、サブスクリプション費用のような定期的な支払いは固定料金となるため、経費の予測が容易になります。
なお、日本およびオーストラリアでは、クレジットカード決済のみ現地通貨払いに対応しており、PayPalで支払う場合は米ドル決済です。
円払いの対象となるプランと注意点
日本円での支払いが可能なのは、Basic・Grow・Advancedの三つのプランです。
一方で、Shopify Plusプランは現地通貨請求の対象外です。Shopify Plusプランの場合、請求書や決済方法は組織全体の設定で管理されるため、個別のストア単位で通貨を変更できません。
また、請求通貨の変更を行うと次回の請求サイクルから適用され、未払い分は旧通貨(米ドル)で処理されます。残りのクレジットは新しい通貨に変換されるため、切り替えのタイミングには注意が必要です。
Shopifyの料金比較:円払いとドル払いの違い
円払いとドル払いでは、為替レートの動きによって支払額が大きく変わることがあります。ここでは、Shopifyの主要プランごとの料金を比較し、どのレートを境にどちらが有利になるのかを具体的に見ていきます。
プラン別の基本料金を比較
2024年5月以降、日本円での固定料金が設定されたことで、為替変動の影響を受けない安定的な支払いが可能になりました。2025年時点の各プランの円建て・ドル建て料金は次の表のとおりです。
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プラン
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月払い(円)
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年払い(円)
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月払い(ドル)
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年払い(ドル)
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| Basic |
4,850円/月 |
3,650円/月 (43,800円/年)
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33ドル/月 |
25ドル/月 (300ドル/年)
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| Grow |
13,500円/月 |
10,100円/月 (121,200円/年) |
92ドル/月 |
69ドル/月 (828ドル/年) |
| Advanced |
58,500円/月 |
44,000円/月 (528,000円/年)
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399ドル/月 |
299ドル/月 (3,588ドル/年) |
日本円の料金は固定されているため、為替の影響を受けません。一方でドル払いの場合は、為替レート(円/ドル)によって日本円換算額が変動します。
為替レート別の損得シミュレーション
ShopifyのBasicプラン(月額33ドル)を例に、次の表で為替レートごとの実質支払額を比較します。
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為替レート
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ドル払いの実質支払額
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円払いとの比較
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結果
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| 1ドル=120円 |
3,960円 |
890円 |
ドル払いがお得 |
| 1ドル=125円 |
4,125円 |
725円 |
ドル払いがお得 |
| 1ドル=130円 |
4,290円 |
560円 |
ドル払いがお得 |
| 1ドル=140円 |
4,620円 |
230円 |
ドル払いがお得 |
| 1ドル=145円 |
4,785円 |
65円 |
ドル払いがお得 |
| 1ドル=147円 |
4,851円 |
1円 |
ほぼ同額 |
| 1ドル=150円 |
4,950円 |
100円 |
日本円払いがお得 |
| 1ドル=155円 |
5,115円 |
265円 |
日本円払いがお得 |
| 1ドル=160円 |
5,280円 |
430円 |
日本円払いがお得 |
この結果から、為替が1ドル=147円を超えると円払いの方が有利になることが分かります。
同様に年払いの場合は1ドル=146円を境に、日本円払いの方がお得です。
2025年10月時点の実際の比較
2025年10月29日執筆時点の為替レートは1ドル=152.10円です。このレートで計算すると、全てのプランで円払いの方が安いです。
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プラン
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円払い(月払)
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ドル払い(月払)
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円払い(年払)
|
ドル払い(年払)
|
| Basic |
4,850円 |
5019.3円
|
43,800円
|
45,630円
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| Grow |
13,500円 |
13,993.2円 |
121,200円 |
125938.8円 |
| Advanced |
58,500円 |
60687.9円
|
528,000円
|
545734.8円 |
年払いでも同様の傾向が見られます。
このように、為替レートが146円以上の円安状態では、全てのプランで円払いの方が実質コストを抑えられる結果となります。
年払いの割引効果
Shopifyでは、年払いを選ぶと月払いより約25%安くなります。
例えばBasicプランでは、月払い4,850円に対して年払いは実質3,650円/月(43,800円/年)となり、年間で約14,000円お得です。
長期的に運用するストアであれば、為替の影響を受けず固定費を大幅に抑えられる「年払い+円払い」の組み合わせが、コストパフォーマンスの面でも最も有利です。
日本円払いのメリット・デメリット
円払いは為替レートの影響を受けない安定した支払い方法ですが、全てのコストが円建てで完結するわけではありません。ここでは、Shopifyの請求における日本円払いの利点と注意点、そしてドル払いとの違いを整理します。
円払いのメリット①為替変動の影響を受けない固定料金
円払いを選択すると、Shopifyのサブスクリプション料金(基本利用料)は固定額で請求されます。
ドル建てのように為替レートによって毎月の支払額が変動することはありません。
そのため、円安時期でも安定したコスト管理が可能です。
円払いのメリット②経費処理・予算計画が立てやすい
経理処理や会計帳簿での円換算作業が不要になり、月次の支出計画が明確になります。
特に企業やチーム単位でShopifyを運用する場合、固定額で管理できる点は大きなメリットです。
円払いのメリット③長期運用でのコスト削減
円払いではサブスクリプション費用が日本円で固定されているため、為替変動による値上がりを防げます。
特に円安が続く局面では、長期的に見ると支払総額を大幅に抑えられます。
円払いのデメリット①一部費用がドル換算される
Shopifyの全ての費用が円建てになるわけではなく、アプリやテーマなど一部の料金は米ドルから日本円に換算されます。
為替レートや手数料の詳細については「現地通貨請求に関する注意点」で後述します。
円払いのデメリット②為替差益の恩恵が得られない
為替が大きく円高に振れた場合、ドル払いの方が安くなることがあります。
短期的な利用や為替を注視できる場合には、ドル払いの方が有利になるケースもあります。
日本円払いへの設定方法
Shopifyでは、管理画面から簡単に請求通貨を日本円に変更できます。操作は数分で完了し、次回の請求サイクルから自動的に日本円での請求に切り替わります。ここでは、具体的な設定手順を紹介します。
①Shopify管理画面にログインする

ストアの管理者アカウントでログインし、左下のメニューから「設定」を開きます。
②「請求情報」を選択する

設定メニュー内にある「請求情報」をクリックします。請求に関する情報や支払い履歴を確認できるページが表示されます。
③ 「請求プロフィール」を開く
請求情報画面の上部にある「請求プロフィール」をクリックします。ここで住所や通貨の情報を編集できます。

④ 「住所と通貨」欄の[管理する]をクリックする

「住所と通貨」セクション内「通貨」の横にある[管理する]ボタンをクリックします。
⑤通貨を「JPY(日本円)」に変更する

表示された「通貨を変更する」画面で「JPY(日本円)」を選択します。
⑥[確定する]をクリックして完了
確認ボタンを押すと変更が保存され、次回の請求サイクルから日本円での請求が開始されます。
画面上に「請求通貨が保存されました。」と表示されれば設定完了です。
現地通貨請求に関する注意点
Shopifyの日本円払いは非常に便利ですが、全ての料金が円建てで統一されるわけではありません。特定の項目では両替手数料が発生したり、対象外のプラン・支払い方法があったりするため、あらかじめ仕組みを理解しておくことが大切です。
現地通貨請求が利用できる国と地域
Shopifyの請求を現地通貨で行えるのは、以下の国や地域に拠点を置くマーチャントです。これらの地域では、Shopifyサブスクリプション料金などが固定された現地通貨で請求されます。
- オーストラリア(AUD)
- カナダ(CAD)
- 欧州連合加盟国(EUR)
- インド(INR)
- 日本(JPY)
- シンガポール(SGD)
- イギリス(GBP)
上記以外の国や地域では、全て米ドル(USD)で請求されます。
支払い方法とプランの制限
Shopifyで現地通貨払いを利用できるのは、原則としてクレジットカード決済を選択している場合のみです。特に日本やオーストラリアでは、クレジットカードのみが日本円や豪ドルなどの現地通貨払いに対応しており、PayPalを利用する場合は自動的に米ドル建てで請求が行われます。 そのため、円払いを希望する場合は、決済方法としてクレジットカードを登録しておく必要があります。
また、前述のとおり、Shopify Plusプランでは現地通貨請求を利用できません。 Plusプランは複数ストアをまとめて運用する法人向けの上位プランであり、請求通貨や決済方法が組織全体で統一管理される仕組みになっています。従って、個別のストア単位で日本円請求を有効化できません。
両替手数料が発生する料金項目
日本円払いを設定しても、次の項目は米ドルから換算され、1.5%の両替手数料が適用されます。
- アプリ料金(サブスクリプション・一回限りの手数料・使用料)
- Shopify POSサブスクリプション
- テーマの購入
- ドメインの購入
- 配送ラベル料金
- 外部サービス取引手数料
各請求書では、Shopifyが使用した最新のコンバージョンレート(為替レート)を確認できます。
為替レートとカード会社の基準レートの違い
Shopifyのドル建て請求をクレジットカードで支払う場合、実際に換算されるレートは市場の為替レートそのものではありません。
VISAやMastercardなどの各カード会社が設定している「基準レート」を基に計算されるため、為替サイトなどで確認できる数値よりも若干高くなる傾向があります。
例えば、執筆時点(2025年10月29日)の為替レートは1ドル=152.01円ですが、同日のVISAの基準レートは1ドル=153.28円、Mastercardの基準レートは1ドル=153.13円となっており、実際の支払額は数円分高くなる計算です。
さらに、カード会社によっては「海外事務手数料」が別途課されます。これは外貨取引時に発生するもので、一般的に2〜3%前後です。そのため、実際の支払額は単純に「ドル × 為替レート」ではなく、
「ドル × 基準レート × 海外事務手数料率」という計算式です。
この仕組みを踏まえると、為替レート上では1ドル=146円以上の円安時に円払いが有利とされますが、
実際にはカード会社の基準レートや海外手数料を加味すると、さらに円払いの優位性が高まるケースが多いといえます。ドル払いを選ぶ場合は、カード会社ごとのレートや手数料条件を事前に確認しておくことが重要です。
通貨変更後の返金・再計算は不可
Shopifyで請求通貨を日本円に変更した場合、その設定は次回の請求サイクルから自動的に反映されます。既に発行済みの請求書や未払い分については、これまでどおり旧通貨(米ドル)で処理されますが、残っているクレジット残高は新しい通貨(日本円)に換算されます。
ただし、通貨変更後に発生した請求については、為替差額を理由とした返金や再計算が行われない点に注意が必要です。変更のタイミングは、月末や新しい請求期間の開始直前など、請求サイクルの区切りが良い時期に行うことが安全です。また、変更直後は請求金額が想定どおりに反映されているか、念のため「請求情報」画面で確認しておくと安心です。
為替手数料の確認を習慣化
アプリやテーマなど米ドル換算の料金を多く利用している場合は、為替レートの変動によって月ごとの請求額が微妙に変動します。
Shopify管理画面の「請求情報」から定期的にレートを確認しておくと、経費の予測がより正確になります。