商品や原材料を扱う企業では、正確な決算や在庫管理のために棚卸しが欠かせません。しかし、棚卸しの目的や進め方を十分に理解しないまま、慣例的に作業している企業もあるでしょう。
棚卸しは、在庫を数えるだけの作業ではありません。実際の在庫と帳簿を照合し、在庫の状態や価値を確認することで、利益や資産を正しく把握する役割があります。
本記事では、棚卸しの意味や目的、実施方法、時期、棚卸資産の評価方法を解説します。棚卸しで起こりやすいミスや、作業を効率化する方法も紹介します。
目次
棚卸しとは?ビジネスでの意味は?
棚卸しとは、企業が保有する商品や原材料などの数量と状態を確認し、その価値を確定する作業です。ここでは、棚卸しの基本的な意味と対象、決算との関係を詳しく解説します。
棚卸しとは
棚卸しとは、店舗や倉庫、工場などに保管されている在庫を数え、帳簿や在庫管理システムに記録された数量と照合する作業です。
単に商品の個数を数えるだけではなく、破損や劣化、使用期限切れなどが発生していないかも確認します。その上で在庫の価値を評価し、決算書に計上する棚卸高を確定します。
例えば、在庫管理システムには100個と記録されている商品が、実際には98個しかなかった場合、2個の棚卸差異が発生しています。入出庫時の記録漏れや数え間違い、紛失、盗難などの原因を調査し、帳簿を実態に合わせて修正しなければなりません。
このように棚卸しには、実在庫の確認と会計上の資産評価という二つの役割があります。
棚卸資産とは
棚卸資産とは、企業が販売や製造などの事業活動のために保有している資産です。一般的な在庫だけではなく、製造途中の品物や、短期間で消費する一部の消耗品も含まれます。
企業会計基準では、商品や製品、半製品、原材料、仕掛品などが棚卸資産として挙げられています。販売活動や一般管理活動において短期間で消費される事務用消耗品なども、棚卸資産に含まれる場合があります。
棚卸資産は、購入した時点で全て費用として処理するものではありません。期末時点で販売や使用が完了していないものは資産として残し、販売や消費が行われた時点で売上原価や費用に振り替えます。
そのため、期末に残っている棚卸資産の数量や金額を正確に把握する必要があります。
棚卸しの対象となる主な資産
棚卸しの対象は、企業の業種や事業内容によって異なります。主な棚卸資産は次のとおりです。
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小売店や卸売業者が販売する商品
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メーカーが製造した完成品
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製造途中の半製品や仕掛品
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製造に使用する原材料や部品
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包装材料や梱包(こんぽう)資材
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販売目的で保有する不動産
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貯蔵中の消耗品
例えば、アパレルショップでは店頭や倉庫にある衣類が主な対象です。食品メーカーでは完成した食品だけでなく、食材や容器、製造途中の製品なども確認します。
自社の敷地内にない在庫も注意が必要です。外部倉庫や物流会社、販売委託先、加工委託先に預けている在庫であっても、自社が所有しているものは原則として棚卸しの対象です。
反対に、自社の倉庫に保管していても、取引先から預かっているだけの商品は自社の棚卸資産ではありません。保管場所だけではなく、期末時点で誰が所有しているかを確認する必要があります。
棚卸しと在庫管理の違い
棚卸しと在庫管理は、どちらも在庫を扱う業務ですが、目的と実施するタイミングが異なります。
在庫管理とは、商品の入荷から保管、出荷までの流れを継続的に管理する業務です。在庫数や保管場所、入出庫履歴、発注状況などを日常的に記録します。
一方、棚卸しは、特定の時点における実在庫を確認し、帳簿上の在庫と照合する作業です。日々の在庫管理が正しく行われているかを検証する役割もあります。
在庫管理を適切に行っていても、入力漏れや商品の破損、紛失などを完全に防ぐことは困難です。定期的に棚卸しを実施することで、在庫データのずれを発見し、正しい数量へ修正できます。
棚卸しが決算や売上原価に与える影響
期末棚卸高は、貸借対照表の資産と損益計算書の売上原価に影響します。
商品の売上原価は、一般的に次の計算式で求めます。
売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高
国税庁の決算資料でも、年初の棚卸高と年間の仕入高を合計し、年末の棚卸高を差し引いて売上原価を算出する方法が示されています。
例えば、期首棚卸高が100万円、当期仕入高が500万円、期末棚卸高が150万円の場合、売上原価は450万円です。
期末棚卸高を本来より少なく計上すると、売上原価が増えて利益が少なくなります。反対に、期末棚卸高を過大に計上すると、売上原価が減り、利益が多く見えます。
棚卸しの誤りは、在庫金額だけでなく利益や税額にも影響するため、決算時には正確な確認が必要です。
棚卸しはなぜ必要?目的は?
棚卸しは、決算書を作成するためだけに行う作業ではありません。在庫管理上の問題を発見し、仕入れや販売を改善する目的もあります。ここでは、企業が棚卸しを実施する主な目的を紹介します。
正確な売上原価や利益を把握する
棚卸しの重要な目的は、期末棚卸高を確定し、売上原価や利益を正確に算出することです。
仕入れた商品が期末に残っている場合、その仕入金額を全て当期の売上原価として処理するわけではありません。未販売の商品は棚卸資産として翌期へ繰り越します。
期末棚卸高が正しくなければ、売上原価や利益も正確に計算できません。決算書を基に経営状況を判断するためにも、実態に合った棚卸高を算出する必要があります。
帳簿在庫と実在庫の差異を把握する
在庫管理システムや在庫台帳に記録された数量を帳簿在庫、現場に実際に存在する数量を実在庫と呼びます。
商品の入出庫を記録していても、入力漏れや二重登録、誤出荷などによって差異が発生する場合があります。棚卸しで双方を照合すれば、在庫データがどの程度正確に管理されているかを確認できます。
差異を見つけた場合は、数量を修正するだけでなく、原因まで調査することが重要です。同じ原因が繰り返されている場合、入出庫の手順やシステムの運用方法に問題があると考えられます。
在庫の管理方法や品質に問題がないかを確認する
実地棚卸では、商品の数量と併せて品質や保管状態も確認します。
例えば、箱がつぶれている商品や汚損した商品、使用期限が切れた商品は、通常の価格で販売できない可能性があります。温度や湿度、直射日光などが原因で品質が低下している場合は、保管環境の改善も必要です。
同じ商品が複数の場所に分散していたり、保管場所が決まっていなかったりする場合も、在庫管理の効率を下げます。棚卸しを通じて、棚の配置やロケーション管理の問題を発見できます。
過剰・滞留在庫を確認し、在庫管理・販売方法を最適化する
棚卸しで在庫数や保管期間を確認すると、必要以上に仕入れている商品や、長期間売れていない商品を特定できます。
過剰在庫は保管スペースを圧迫するだけでなく、仕入れに使った資金を在庫として固定します。流行や季節の影響を受ける商品では、時間の経過によって販売価値が下がる恐れもあります。
滞留在庫が見つかった場合は、値下げ販売やセット販売、販路の変更、廃棄などを検討します。発注量や発注頻度を見直せば、将来の過剰在庫も抑えやすくなります。
紛失や盗難、入出庫処理のミスを発見する
帳簿在庫より実在庫が少ない場合、記録漏れや出荷ミスの他、紛失や盗難も考えられます。
特定の商品や保管場所で差異が繰り返されている場合は、作業手順や管理体制を確認しなければなりません。高額商品や小型商品は持ち出しに気づきにくいため、保管場所への入室制限や監視体制の見直しも必要です。
棚卸差異の記録を継続的に分析すると、問題が起こりやすい商品や工程を把握しやすくなります。
棚卸しはやらないとどうなる?
棚卸しを行わないと、帳簿と実在庫のずれを把握できず、決算や経営判断に影響します。ここでは、棚卸しを実施しない場合に考えられるリスクを詳しく解説します。
正確な決算書を作成できなくなる
棚卸しを実施しなければ、期末時点で保有している棚卸資産の数量と金額を正確に確定できません。
期末棚卸高は、貸借対照表の資産と損益計算書の売上原価に反映されます。誤った数量を使用すると、資産や利益が実態と異なる決算書が作成されます。
決算書は、経営者だけでなく金融機関や株主、取引先などが企業の状態を判断する資料です。数字の信頼性が低ければ、融資や取引の審査にも影響する可能性があります。
申告内容の誤りや税務調査のリスクが高まる
棚卸高を誤ると、所得や法人税などの計算にも影響します。単純な数え間違いや処理漏れが直ちに脱税と判断されるわけではありませんが、誤りが見つかれば修正申告や追加納税が必要になる場合があります。
特に、税負担を減らす目的で棚卸資産を意図的に除外したり、棚卸表へ虚偽の記載を行ったりする行為には注意が必要です。国税庁は、帳簿へ記録せずに棚卸資産を除外する行為を、隠蔽(いんぺい)または仮装に該当する例として挙げています。
棚卸表や集計資料には、数量や単価の根拠が分かる記録を残し、決算後も適切に保存することが重要です。
欠品や過剰在庫が発生しやすくなる
在庫データが実態とずれていると、適切な発注判断が難しくなります。
帳簿上は在庫があるのに実際には商品がなければ、受注後に欠品が判明するかもしれません。販売機会を逃すだけでなく、顧客への連絡や注文のキャンセルなどの対応も発生します。
反対に、実在庫より帳簿在庫が少ない場合は、不要な追加発注につながります。過剰在庫が増えると、保管費用や廃棄損失も増加しやすくなります。
資金繰りや経営判断を誤る可能性がある
在庫は会計上の資産ですが、販売されるまで現金には変わりません。過剰な仕入れを続けると、帳簿上は資産が増えていても、支払いに使える現金が不足する場合があります。
棚卸しを行わず、売れ残っている商品や販売価値が低下した在庫を把握していなければ、実際よりも経営状態が良いと判断する恐れがあります。
正確な在庫データがあれば、仕入れの削減や販売促進、廃棄などの対策を早い段階で検討できます。
資金繰りが悪化し、倒産リスクが高まる
在庫の増加が続くと、仕入代金や保管費用の負担が大きくなります。売り上げが計上されていても代金を回収できていない場合は、さらに資金繰りが厳しくなります。
棚卸しを行っただけで倒産を防げるわけではありません。しかし、過剰在庫や滞留在庫を放置すると、現金が不足する要因になり得ます。
定期的に棚卸しを行い、在庫回転率や保管期間も確認することで、資金繰りの悪化を早期に把握しやすくなります。
棚卸しのやり方
ここでは、実地棚卸と帳簿棚卸の違いを踏まえ、一般的な棚卸しの進め方を紹介します。
実地棚卸
実地棚卸とは、現場にある商品や原材料を実際に数える方法です。数量だけでなく、破損や劣化、保管場所なども確認します。
作業は2人1組で行い、1人が数量を数え、もう1人が記録や確認を担当するとミスを防ぎやすくなります。高額商品や差異が発生しやすい商品は、担当者を変えて再度数える方法も有効です。
実地棚卸では、タグ方式またはリスト方式がよく用いられます。
タグ方式とは、棚卸しの対象となる商品や保管場所に棚札と呼ばれるタグを配布し、数えた数量を記入する方法です。
記入後にタグを回収し、配布枚数と回収枚数を照合します。タグが残っていれば未確認の場所を発見しやすいため、数え漏れを防ぐ効果があります。
一方、タグの紛失や二重発行が起きると集計に影響します。あらかじめ連番を付け、未使用分や書き損じも含めて管理する必要があります。
リスト方式とは、商品コードや商品名、保管場所が記載された棚卸表を用意し、確認した数量を書き込む方法です。
普段から商品と保管場所が整理されている企業に適しています。バーコードリーダーやハンディターミナルと組み合わせれば、紙への記入や転記を減らせます。
ただし、リストに記載されていない商品を見落とす可能性があります。棚卸表にない在庫を見つけた場合の記入欄を設け、現場に存在する全ての商品を確認します。
帳簿棚卸
帳簿棚卸とは、仕入れや入庫による増加と、販売や出庫による減少を帳簿上で記録し、在庫数を算出する方法です。
継続的に在庫の増減を記録するため、理論上はいつでも帳簿在庫を確認できます。在庫管理システムを導入している企業では、システム上の在庫数が帳簿棚卸の基礎となります。
ただし、帳簿棚卸だけでは、破損や紛失、入力漏れなどを確認できません。決算時や一定の周期で実地棚卸を行い、実在庫との一致を確認する必要があります。
棚卸しはいつやる?時期と頻度は?
棚卸しの実施時期は、決算期末だけに限られません。在庫数や商品の特性に応じて、月次や四半期ごとに実施する企業もあります。ここでは、棚卸しの時期と、一斉棚卸・循環棚卸の違いを紹介します。
決算期末に実施する
棚卸資産を保有する企業は、決算時点の在庫数量と金額を確定する必要があります。そのため、事業年度の最終日に棚卸しを行うことが基本です。
期末当日の実施が難しい場合は、期末に近い日に実地棚卸を行い、棚卸日から期末までの入出庫を加減して期末時点の数量を算出します。国税庁も、年末当日に棚卸しが難しい場合は、前後の近い日に実施し、その間の取引を反映して年末時点の棚卸高を計算する方法を示しています。
期末以外の日に実施する場合は、数量の調整方法や計算根拠を明確に残しておきましょう。
月次・四半期など定期的に実施する
在庫の種類や取引量が多い企業では、決算期末以外にも月次や四半期ごとに棚卸しを行う場合があります。
短い周期で棚卸しを実施すると、差異が発生した時期を絞り込みやすくなります。滞留在庫や品質低下も早期に発見できるため、仕入れや販売施策を見直す機会も増えます。
ただし、実施回数を増やすほど作業負担も大きくなります。全ての商品を毎月数えるのではなく、高額商品や動きの多い商品を優先する方法も検討しましょう。
一斉棚卸
一斉棚卸とは、店舗や倉庫にある在庫を特定の日にまとめて確認する方法です。
期末時点の在庫を一括して把握しやすく、明確な基準日を設けられる点がメリットです。一方、在庫数が多い企業では、多くの人員と時間が必要です。
棚卸し中に通常業務を続けると数量が変動するため、出荷や入荷を一時停止する場合もあります。休業日や営業時間外に実施すれば、営業への影響を抑えやすくなります。
循環棚卸
循環棚卸とは、在庫を複数のグループに分け、日や週、月ごとに少しずつ確認する方法です。サイクルカウントとも呼ばれます。
一度に全ての商品を数えないため、通常業務を止めずに実施しやすい点が特徴です。高額商品や出荷頻度の高い商品は短い周期、動きの少ない商品は長い周期に設定するなど、重要度に応じて頻度を変えられます。
ただし、決算時点の在庫を正しく確定するには、循環棚卸の結果と期末までの入出庫記録を正確に管理する必要があります。
棚卸しの評価方法
実地棚卸で数量を確認した後は、単価を掛けて棚卸資産の金額を算出します。同じ商品でも仕入時期によって単価が異なるため、一定の評価方法を継続して使用することが重要です。ここでは、原価法と低価法を中心に、主な評価方法を詳しく解説します。
原価法
原価法とは、棚卸資産の取得価額を基に期末の評価額を算出する方法です。
商品を異なる価格で複数回仕入れている場合、期末在庫にどの単価を使用するかによって評価額が変わります。主な方法には、個別法や先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法、最終仕入原価法があります。
税務上の評価方法を選定する際には、所定の届出が必要になる場合があります。法人向けの棚卸資産の評価方法の届出手続きは、国税庁が案内しています。
低価法
低価法とは、原価法で算出した取得原価と、期末時点の価値を比較し、低い金額で棚卸資産を評価する方法です。
通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性が低下している場合は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げる会計処理を行います。正味売却価額とは、売価から追加の製造原価や販売に直接必要な経費を差し引いた金額です。
例えば、取得原価が1個1,000円の商品について、販売価格の下落などにより回収可能な金額が700円となった場合、低価法では700円を基に評価します。
ただし、会計上の処理と税務上認められる処理が一致しない場合もあります。評価損を計上する際は、適用条件や届出の有無を確認しましょう。
棚卸しを効率化する方法
棚卸しは、多くの人員と時間を要する業務です。日常の在庫管理を整備し、デジタル機器やシステムを活用すると、作業負担と入力ミスを減らせます。ここでは、棚卸しを効率化する主な方法を紹介します。
バーコードやQRコードを活用する
商品や棚にバーコードまたはQRコードを付け、スマートフォンやハンディターミナルで読み取ると、商品コードの手入力を減らせます。
読み取った商品と数量を棚卸データへ直接反映すれば、紙の棚卸表からシステムへ転記する作業も不要です。類似した商品名や型番の入力間違いを防ぐ効果もあります。
既にメーカーのバーコードが付いている商品は、そのコードを在庫管理システムの商品マスターと連携できる場合があります。自社独自の商品や保管場所には、独自のコードを発行して管理します。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムを導入すると、入荷や出荷、返品、倉庫間移動などの情報を一元管理できます。
棚卸機能を備えたシステムでは、帳簿在庫と実在庫の差異を自動で表示し、在庫調整の履歴も残せます。ECサイトや販売管理システム、会計システムと連携すれば、複数のシステムへの重複入力も減らせます。
システムを選ぶ際は、商品数や拠点数、利用人数を確認しましょう。賞味期限やロット番号、製造番号を管理する企業では、それらの項目に対応しているかも重要です。
ただし、システムを導入しても、現場で入出庫を正しく登録しなければ在庫データは合いません。運用ルールの整備と従業員への教育も併せて行う必要があります。
RFID(ICタグ)を利用する
RFIDとは、ICタグに記録された情報を電波で読み取る仕組みです。バーコードのように一つずつ読み取り位置を合わせる必要がなく、複数のタグをまとめて読み取れます。
アパレル商品や書籍など、取扱点数が多い現場では、棚卸時間を短縮しやすい方法です。箱を開けずに内容物を確認できる運用も考えられます。
一方、ICタグや読み取り機器の導入費用がかかります。商品単価や在庫数、棚卸しにかかっている人件費を踏まえ、費用対効果を検討しましょう。
金属や液体の影響を受けやすいタグもあるため、商品や保管環境に合った機器を選ぶ必要があります。
倉庫と工場では棚卸しの対象や方法が異なる
倉庫と工場では、保管している在庫の種類や確認項目が異なります。特に工場では、製造途中の仕掛品や製造原価の把握が必要です。ここでは、倉庫と工場における棚卸しの違いを詳しく解説します。
倉庫では在庫の数量・状態・保管場所の確認が中心
倉庫の棚卸しでは、保管している商品の数量と状態、保管場所を確認します。
商品や完成品を扱う物流倉庫では、商品コードやロット番号、使用期限、保管ロケーションなどを照合します。返品商品や出荷待ちの商品、破損品などは、通常の販売可能在庫と分けて管理する必要があります。
ただし、倉庫に保管されているものが完成品だけとは限りません。製造業の倉庫では、原材料や部品、半製品を保管している場合もあります。
倉庫の種類ではなく、実際に保管されている在庫の所有者や状態を確認して、棚卸しの対象を決めましょう。
工場では原材料・部品・仕掛品・半製品・完成品が対象
工場では、完成した製品だけでなく、製造前の原材料や部品、製造途中の仕掛品、半製品なども棚卸しの対象です。
製造工程ごとに在庫が分散している場合は、倉庫だけでなく製造ラインや作業場、検査場所なども確認します。機械に投入済みの材料や、外部の加工会社へ預けている品物も見落とさないようにしましょう。
原材料は重量や長さ、容量で管理する場合があります。使いかけの材料については、測定方法や端数の扱いを事前に統一する必要があります。
工場では仕掛品の進捗度や製造原価の評価が必要
仕掛品とは、製造を開始しているものの、まだ完成していない製品です。完成品と異なり、数量を数えるだけでは正しい評価額を算出できません。
使用した原材料費や人件費、製造経費などを把握し、製造の進み具合に応じて仕掛品の原価を計算します。進捗(しんちょく)度の判断基準が担当者によって異なると、評価額にも差が生じます。
工程ごとに完成度の基準を設け、作業日報や製造指示書などの記録と照合すると、評価の一貫性を保ちやすくなります。
製造業では、製品や半製品、仕掛品へ製造間接費を配賦する処理も関係します。国税庁の法人税基本通達にも、製造間接費の製造原価への配賦に関する取り扱いが示されています。
棚卸しに関するQ&A
棚卸しでは、数え間違いや入出庫の扱いなど、さまざまな疑問が生じます。最後に、棚卸しの実務でよくある質問と回答を紹介します。
棚卸しで起こりやすいミスは?
棚卸しで起こりやすいミスは、数え漏れや二重計上、商品コードの取り違え、単位の間違いです。
同じ商品が複数の棚に置かれている場合は、一方を見落としたり、同じ在庫を2回数えたりする可能性があります。箱単位と個数単位が混在している場合も、数量が大きくずれやすくなります。
棚卸し中に商品が移動すると、数える前と後のどちらに含まれているか分からなくなることもあります。作業範囲を区切り、確認済みの棚には目印を付けると防ぎやすくなります。
数えた担当者とは別の人が再確認する仕組みも有効です。特に高額商品や差異が大きい商品は、再カウントを徹底しましょう。
棚卸差異の発生時の対処法は?
棚卸差異が発生した場合は、まず実在庫を再度確認します。数え間違いがなければ、入出庫履歴や返品、廃棄、在庫移動の記録を調査します。
原因が判明した場合は、正しい実在庫に合わせて帳簿を修正し、修正理由を記録します。原因が分からない場合も、差異を放置せず、社内の承認ルールに従って在庫調整を行いましょう。
差異の金額が大きい場合や、同じ商品で繰り返し発生する場合は、単なる入力ミスではなく、業務フローや管理体制に問題がある可能性があります。
差異率や発生件数を継続的に記録し、原因ごとに改善策を検討することが大切です。
棚卸表の正しい書き方は?
棚卸表には、棚卸しの実施日や商品名、商品コード、数量、単位、単価、金額などを記載します。
主な記載項目は次のとおりです。
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棚卸しの実施日
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店舗や倉庫などの拠点名
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保管場所
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商品名
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商品コード
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数量
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管理単位
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評価単価
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評価金額
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商品の状態
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棚卸担当者
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確認者
破損品や期限切れ商品がある場合は、通常在庫と区別して記載します。評価額を引き下げた場合は、その理由や計算根拠も残しましょう。
法人が作成した棚卸表は、決算に関係する書類として原則7年間の保存が必要です。欠損金が生じた一定の事業年度などでは、10年間の保存が必要になる場合もあります。