Shopify Plusは、月商数百万円〜億単位の運営を支えるために設計された、プロフェッショナル仕様のエンタープライズプランです。
通常プランでは実現できないチェックアウト画面のカスタマイズや、B2B販売への本格対応、複数ストアの一括管理、高度な自動化機能など、ストアの成長をさらに後押しする機能が豊富に搭載されています。
本記事では、Shopify Plusの料金体系や決済手数料、他プランとの明確な違い、そして導入することで得られる実用的なメリットを、初めての方にも分かりやすく解説します。大規模EC・法人販売・越境展開を視野に入れている方は、ぜひ導入検討の参考にしてください。
目次
Shopify Plusとは
Shopify Plusの機能
Shopify Plusを導入するメリット
Shopify Plus以外のプランの紹介
Shopify Plusの導入事例
Shopify Plusがおすすめな運営者とは
Shopify Plusに関するQ&A
Shopify Plusとは
まず始めに、Shopify Plusの特徴や料金体系について解説します。
Shopify Plusの概要

Shopify Plusは、Shopifyが提供するプランの中で最上位に位置付けられるエンタープライズ向けのプラットフォームです。
標準プランでは対応が難しい複数ストアの一元管理や、高度なワークフロー自動化、マルチチャネルでの販売、多通貨・多言語対応、そして柔軟なカスタマイズが可能なチェックアウト機能など、より高機能なソリューションを提供します。
主に、月間売り上げが80,000ドル(約1,000万円〜1,200万円)の企業や、複数地域への展開、大量取引などを行うEC事業者に適しており、1分間に10,000件を超えるチェックアウト処理を安定的に行える高いスケーラビリティを備えている点も大きな特徴です。
Shopify Plusの料金
利用料金は月額2,300ドル〜(3年契約の場合)、または月額2,500ドル〜(1年契約の場合)です。ただし、ビジネスの複雑性や売り上げ規模によっては、収益構造や取引形態に応じて個別の変動料金が適用される場合があります。
また、Shopify Plusには多言語・多通貨展開などに対応できるよう、最大10店舗分の追加ストアが無料で含まれています。10店舗を超える場合は、1店舗当たり月額250ドルで追加可能です。
Shopify Plusの決済手数料
Shopify独自の決済プラットフォームである「Shopifyペイメント」を利用する場合、取引手数料は発生しません。決済手数料のみが発生し、例えば、JCBやその他国内カードの場合は2.9%、Amexやその他国際カードの場合は3.75%です。
一方で、Shopifyペイメントを使用せずに、PayPalやAmazon Payなどの外部決済サービスを導入する場合は、取引手数料が0.2%発生します。なお、一般的なShopifyプランではこの取引手数料が0.6%〜2%に設定されているため、Shopify Plusプランでは大幅に優遇された料率が適用される点が大きなメリットです。
Shopify Plusの機能
Shopify Plusには、他のプランにはない高度な機能や専用サポートが用意されています。
ここでは、Plusプランならではの主な特徴を紹介します。
低価格プランからの拡張機能
Shopify Plusでは、従来のプランにはない高度な拡張機能が多数搭載されており、急成長中の事業や大規模運営に対応する柔軟性を備えています。主な強化ポイントは次のとおりです。
在庫ロケーション数の大幅拡大
Basic〜Advancedプランでは最大10カ所までの制限がある在庫ロケーションが、Plusプランでは最大200カ所まで対応しています。
強化された24時間チャットサポート
Plusプランでは、通常プランのチャットサポートに比べ、より専門的かつ優先対応の体制が整っており、ビジネスの安定運営を支援します。
無制限のスタッフアカウント
Growプランで最大5件、Advancedプランで最大15件に制限されているスタッフアカウントが、Plusでは無制限で追加可能です。
POS Proのロケーション拡張
Basic〜Advancedプランでは最大10カ所に制限されているロケーション数が、Plusプランでは最大200カ所まで拡張可能です。
Shopify Plusの限定機能

Shopify Plusは、通常のShopifyプランでは利用できないエンタープライズ向けの専用機能があります。
B2B on Shopify
組み込み型のB2Bツールで、卸売販売と消費者向け直販を一元管理できます。
ヘッドレスコマース
Shopify APIとお使いのテクノロジーを連携させ、自由度の高いフロントエンドを構築できます。
Shopify POS Pro
複数店舗でシームレスに販売できるPOSプラットフォームを利用できます。
チェックアウトのカスタマイズ
Shop Payや決済ページを含むチェックアウトをブランドに合わせてパーソナライズできます。
ShopifyQL Notebooks
専用クエリ言語でコマースデータを可視化・分析できます。
Shopify Functions
独自アプリやバックエンドロジックを拡張し、要件に応じた機能を追加できます。コードレベルでビジネスルールを細かく設定できます。
Managed Markets
強力なローカライズ機能を活用して越境販売を簡素化できます。海外市場への展開をスムーズに進められます。
Launchpad
Launchpad(ランチパッド)は、セールや新商品の発売日時を事前に設定し、自動で開始・終了できるShopify Plus専用の自動化ツールです。手動操作なしで、指定した時間にキャンペーンを正確に実行できます。
専任パートナーや限定サービス

Shopify Plusには、導入から運用、成長支援までを包括的にサポートする専任パートナーや限定サービスが用意されています。
Shopifyのパートナーとアプリ
業界の専門家が開発・運営するアプリやツールを活用することで、イノベーションや業務効率化を推進できます。信頼性の高い外部サービスと連携し、ストアの機能を柔軟に拡張できます。
世界有数のシステムインテグレーター
IBMやAccenture、Deloitteなど、グローバル大手のSI企業と連携可能です。EC構築やシステム移行といった高度なプロジェクトにも安心して対応できます。
プロフェッショナルサービス
データ移行や複雑な初期構築をスムーズに行うためのハンズオン支援を提供します。Shopify Plus専用の専門チームによる設計・開発サービスが利用可能です。
コミュニティリソース
Shopify Plusアカデミーやフォーラムなど、自習型リソースも充実しています。さらに、24時間対応の優先サポートも受けられるため、運用中の不安にもすぐに対応できます。
Shopify Plusを導入するメリット
Shopify Plusを導入する主なメリットは次のとおりです。
- 圧倒的な処理性能と高い可用性
- 帯域幅の実質無制限による高速表示
- チェックアウト画面の自由なカスタマイズ
- 柔軟なグローバル展開の実現
それぞれを詳しく解説します。
圧倒的な処理性能と高い可用性
Shopify Plusの最大の特徴は、急激なトラフィック増加や大量注文にも耐えられる、堅固でスケーラブルなインフラです。
テレビ放映やインフルエンサーとのコラボなどにより瞬間的に数万単位のアクセスが集中しても、ページ遷移や決済処理が滞ることなく、スムーズな購買体験を維持できます。
帯域幅の実質無制限による高速表示
Shopify Plusでは帯域幅に上限がなく、ピーク時のアクセス集中においてもサイト表示速度が落ちることはほとんどありません。
これにより、表示遅延による離脱やカゴ落ちを防ぎ、CVR向上に貢献します。
チェックアウト画面の自由なカスタマイズ
通常のShopifyプランでは制限されているチェックアウトページの編集が、Plusでは自由に行えます。
FAQリンクの設置や、プロモーションメッセージの表示、アンケートの挿入、ブランドデザインに沿ったUI設計など、顧客体験の最適化とブランド訴求力の強化が可能です。
柔軟なグローバル展開の実現
Shopify Plusでは最大9つの追加ストア(クローンストア)を無料で開設でき、地域ごとの言語や、通貨、商品ラインアップ、プロモーションに応じた最適なストア運営が行えます。これにより、各国市場のニーズに即した販売戦略を構築しやすく、海外売り上げの拡大が期待できます。
Shopify Plus以外のプランの紹介
Shopify Plus以外のプランは次のとおりです。
- オンラインストア運営機能付きプラン(通常プラン)
- Basic(ベーシック)
- Grow(グロウ)
- Advanced(アドバンスド)
- オンラインストア機能なし/限定的なプラン(特化型)
- Starter(スターター)
- Retail(リテール)
これらのプランを解説します。
Basic

Basicプランは、月額3,650円(年払い25%オフの場合)の、本格的なオンラインストアを構築できる標準プランです。
ショッピングカートや、独自ドメイン設定、テーマのカスタマイズ、ブログ投稿、多言語・多通貨対応など、ECサイトに必要な基本機能が全てそろっています。
Basicプランでは、Shopifyペイメント利用時の決済手数料は3.55%、外部決済サービスを利用する場合は2%の追加手数料がかかります。
Grow
Growプランは、月額10,100円(年払い25%オフの場合)の、スタッフ追加や本格的なマーケティング機能を必要とする中小企業向けのプランです。
Basicプランの全ての機能に加え、スタッフアカウントが最大5名まで拡張でき、詳細な販売レポートやプロフェッショナルな販促機能も利用可能です。
Growプランでは、Shopifyペイメント利用時の決済手数料は3.4%、外部決済サービスを利用する場合は1%の追加手数料がかかります。
Advanced
Advancedプランは、月額44,000円(年払い25%オフの場合)の、大規模ストアや海外展開を見据えた事業向けの上位プランです。
Growプランの全機能に加え、最大15名までのスタッフアカウント登録や、高度なカスタムレポート、配送料・関税・輸入税の自動計算など、国際販売や複雑な業務管理に対応する機能がそろっています。
Advancedプランでは、Shopifyペイメント利用時の決済手数料は3.25%、外部決済サービスを利用する場合は0.6%の追加手数料がかかります。
Starter
Starterプランは、月額750円で始められるShopifyの最も手軽なプランです。SNSやチャット、メールで商品リンクを共有し、ECサイトを作らずに販売を始められます。副業やスモールビジネスに最適です。オンラインストアの構築機能はなく、販売チャネルはリンク経由に限定されます。つまりStarterは、「リンクで売る」シンプルな販売スタイルに特化しています。
Starterプランでは、Shopifyペイメント利用時に5%の決済手数料が発生します。
Retail
Retailプランは、月額13,000円で利用できる、実店舗販売に特化したプランです。オンラインストアの機能は含まれておらず、対面販売専用として設計されています。
レジ機能やスタッフ管理、在庫追跡、ギフトレシート、ローカル配達、返品処理など、実店舗運営に必要な高度な機能を網羅しており、Shopify POS Pro(1ロケーション分)の利用も標準で含まれています。
決済手数料は、Shopifyペイメントを利用した場合で3.55%、外部決済サービスを使用する場合には2%の追加手数料が発生します。
Shopify Plusの導入事例
Shopify Plusは、多くの大手ブランドや成長企業に選ばれています。ここでは、実際にPlusを導入し、成果を上げた国内外の代表的な企業の事例をご紹介します。
日清食品(Nissin)

食品業界のリーディングカンパニーである日清食品は、2022年にShopify Plusを導入しました。
わずか4カ月で大規模リニューアルを実現し、キャンペーン対応やデータ移行も含めた複雑な作業も短期間で完了しています。
導入後は、GMV(流通取引総額)が166%、セッション数が151%、リピーター数154%と大幅に成長しています。
高い注文処理能力や、拡張性、セキュリティ、そして柔軟なサポート体制が、ビジネスの成長を力強く支えています。
DAISO(ダイソー)

国内外に5,000店舗以上を展開する100円ショップのダイソーは、法人向け販売と数万点規模の商品管理を両立するため、Shopify Plusを導入しました。
B2BとB2Cを一元管理できる柔軟なシステムを構築し、商品データの統合や決済連携、在庫・配送業務の効率化を実現しました。
導入後は売上高が400%増加、サイトトラフィックも249%増加するなど大きな成果を上げています。
多言語・多通貨対応によって、グローバル展開にも柔軟に対応できるEC基盤が整いました。
Francfranc(フランフラン)

インテリア・雑貨ブランドのFrancfrancは、OMO戦略の強化とブランド体験の最大化を目的に、2019年にShopify Plusを導入しました。
柔軟なカスタマイズ性と多言語・多拠点対応のスピード感により、急成長するECニーズに対応しつつ、ブランドの世界観を体現するオンラインストアを構築しています。
導入後はGMVが約2.2倍、オーガニック検索からのセッション数が約1.7倍、コンバージョン率(CVR)が約1.6倍に向上するなど、大きな成果を上げています。
店舗在庫との連携やマーケティング施策の最適化にも取り組み、OMO基盤としての機能を強化しました。
サンドラッグ

ドラッグストア大手のサンドラッグは、B2CとB2Bを同時に展開できる柔軟なEC基盤を求めて、Shopify Plusを導入しました。
会員情報と購入履歴を統合した「サンドラッグ Online Store」をリニューアルオープンし、実店舗とオンラインをシームレスに連携させたユニファイド・コマースを実現しています。
導入後は、柔軟性を生かしたスピーディなECサイトのリニューアルや、Shopifyアプリによる店舗・オンラインの購買履歴の統合、さらにCRMやMAとの連携による顧客データの活用が可能となりました。
社内業務の効率化と顧客満足度の向上を両立し、デジタル戦略の中核として大きな成果を上げています。
Shopify Plusがおすすめな運営者とは
Shopify Plusは、全ての店舗に適したプランではなく、売り上げや事業規模が一定以上の成長段階にある事業者向けの上位プランです。次のような要件をお持ちの方には、特におすすめです。
- 月商数千万円〜数億円のEC事業を運営している
- アクセスや注文が急増しても安定稼働できる基盤が必要
- 業務効率化や自動化を積極的に進めたい
- 海外展開や多店舗展開を本格化させたい
- ブランディングや購入体験を細部までこだわりたい
- 専任担当者による戦略的なサポートを受けたい
上記に該当する場合は、Shopify Plusの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Shopify Plusに関するQ&A
最後に、Shopify Plusに関するよくある質問とその回答を紹介します。
AdvancedからPlusへの最適な移行タイミングはいつか
次のいずれかに該当する場合は、Shopify Plusへの移行を検討するタイミングといえます。
- 月商が80,000ドル(約1,000万円〜1,200万円)を超えた場合
- フラッシュセールやSNSバズによるアクセス集中が頻繁に起きる場合
- 業務自動化や効率化を急ぎたい場合
- 多ブランド運営や海外展開を本格化したい場合
- チェックアウトの高度なカスタマイズが必要な場合
Plusへの移行はShopify営業担当またはパートナー代理店との直接契約が必要です。詳細はShopify公式ページからお問い合わせください。
Shopify Plusの導入にはどれくらいの期間がかかるか
一般的には、既存のECプラットフォームからShopify Plusへの移行は約90日ほどで完了します。
ただし、大規模なカスタマイズや外部システムとの連携が必要な場合は、それ以上の期間を要することもあります。
詳細なスケジュールについては、Shopify公式ページからお問い合わせください。
Shopify Plusは費用対効果が高いか
一定規模以上のビジネスにとっては高い費用対効果が期待できます。
取引手数料が低いため、売り上げが増えるほどコストを抑えやすく、Shopify Flowなどによる業務自動化も人件費削減に貢献します。
また、大量アクセスへの対応力や複数ストアによる海外展開、専任担当者のサポートも成長を後押しします。
こうしたメリットを踏まえると、投資以上のリターンを得られる可能性は十分あります。
Shopify Plusと他のエンタープライズ向けECプラットフォームとの違いは何か
Shopify Plusは、操作が分かりやすく扱いやすい管理画面と導入の速さが特徴で、他のエンタープライズ型プラットフォームと比べて短期間で運用を開始できます。
SaaS型のため、セキュリティ対策やシステム保守は全てShopify側が担い、自社でエンジニアリソースを抱える必要がありません。
また、豊富なアプリエコシステムにより、機能追加や業務連携も柔軟に行えます。
初期投資や運用コストを抑えながら、拡張性の高いEC環境を構築できる点が大きな強みです。