Shopifyでのセット販売(バンドル販売)は、客単価アップや在庫回転率改善に効果的な販売戦略です。
単に商品をまとめて販売するだけでなく、ターゲットや価格設定、在庫管理、マーケティング視点を意識することで、売り上げを安定的に伸ばせます。
本記事では、Shopifyでセット販売を成功させるためのポイント、メリット・デメリット、おすすめアプリまで詳しく解説します。
目次
Shopifyのセット販売(バンドル販売)の概要
Shopifyのセット販売のメリット
Shopifyのセット販売のデメリット
Shopifyセット販売のおすすめアプリ
Shopifyでセット販売を成功させるポイント
Shopifyのセット販売(バンドル販売)の概要
まず始めに、Shopifyのセット販売について解説します。
セット販売とは
セット販売とは、複数の商品をまとめて一つのパッケージとして提供する販売方法です。
単品購入よりお得感を演出でき、在庫回転率や客単価の向上にもつながります。
消費者にとっても、必要な商品を一度にそろえられる利便性があり、購買意欲を高めやすい仕組みです。
セット商品の組み合わせ
セット販売では、どんな組み合わせにするかが重要です。ターゲット顧客のニーズを考えながら、相性の良い商品を組み合わせることで魅力的な提案ができます。
関連商品
互いに補完し合う商品を組み合わせたセットです。例えばスキンケアなら「化粧水+乳液+美容液」といった形でそろえると、購入者は必要なアイテムを一度に購入でき便利です。
同一商品
同じ商品をまとめて割安に提供するセットです。まとめ買い需要に応えやすく、日用品や消耗品との相性が特に高い方法です。
セールによるセット商品
期間限定セールやキャンペーンで特別なセットを組む手法です。割引率を強調し、在庫処分や新規顧客の獲得に効果的です。
価格の決め方
セット販売における価格設定は、購入者に「お得感」を与えながらもショップとしての利益を確保するために重要な要素です。一般的には次の三つの方法が用いられます。それぞれの特徴を理解した上で、自社の商品や販売戦略に合った価格設定を行いましょう。
金額を固定する方法
あらかじめセット商品価格を一定金額に設定する方法です。例えば、「通常合計価格5,000円の商品を、セット価格4,500円で販売する」という形です。
分かりやすく「セットでこの価格」と打ち出せるため、ギフトセットや単純な組み合わせに適しています。
価格が明確で安心感を与えられる点がメリットですが、原価率が高い商品を含む場合は利益管理に注意が必要です。
定額で割引する方法
複数の商品を購入した際に、合計金額から一定額を割り引く方法です。例えば、「まとめ買いで500円引き」といったプロモーションがこれに当たります。
割引額が明確で、購入者に「この分だけ得をしている」と実感させやすい点が特徴です。
ただし、商品の合計金額に対して割引額が適切かを見極める必要があり、高額セットと低額セットを同時に用意する場合は特に調整が求められます。
定率で割引する方法
購入金額に応じて合計から一定の割合を割り引く方法です。
「まとめ買いで10%オフ」などが代表例で、高額商品のセット販売を後押しする際に効果的です。
一方で、割引額が計算しづらく購入者に伝わりにくい場合もあるため、「約○○円お得」といった補足を加えるとより親切です。
セット販売とクロスセルの違い
「セット販売」と「クロスセル」は一見似ていますが、実際には仕組みが異なります。
セット販売は、販売者が関連性のある商品をあらかじめ組み合わせて「一つのパッケージ」として提供する販売方法です。
対してクロスセルは、購入者がある商品を購入するタイミングで、追加で使いやすい商品や相性の良いアイテムを提案し、自然な流れで複数購入を促す仕組みです。
どちらも客単価を上げる手法ですが、セット販売は「事前に構成されたお得なセット」、クロスセルは「購入プロセスの中で提示される追加提案」です。
Shopifyのセット販売のメリット
Shopifyのセット販売のメリットは次のとおりです。
- 顧客単価を上げられる
- コストを削減できる
- 在庫を削減できる
- 購入体験を向上できる
- セール施策に活用できる
- 新しい商品の露出機会になる
- ショップページが充実する
- ギフト需要に対応できる
- 導入が容易である
それぞれを詳しく紹介します。
顧客単価を上げられる
セット販売は1回の注文当たりの売り上げ(客単価、AOV)を押し上げる効果があります。
購入者にとっては単品購入より「お得に買える」印象を与えるため、自然と複数商品をまとめて購入しやすくなります。
広告費を増やさずに売り上げを伸ばせる点も大きな魅力です。
コストを削減できる
複数商品をまとめて発送できるため、資材や配送費、人件費の削減につながります。
出荷作業の効率化により、配送ミスや破損リスクの低減も期待できます。
規模が大きい店舗ほど効果が顕著です。
在庫を削減できる
動きにくい商品やシーズンオフの商品を売れ筋と組み合わせることで、在庫回転率を高められます。
結果として、倉庫スペースや保管コストの削減、在庫リスクの低減に役立ちます。
多品種少量型のECショップにとっては、在庫効率の改善は事業継続に直結する重要課題であり、セット販売はその打開策となりえます。
購入体験を向上できる
購入者にとって必要な商品をまとめて入手できる便利さを提供できます。
スターターキットや用途別のセットは、購入のハードルを下げ、ブランドへの信頼感やリピート率の向上にも寄与します。
購入後の満足度が高いほど、レビュー投稿や口コミによる波及効果も期待できます。
セール施策に活用できる
期間限定やキャンペーンと組み合わせることで、集客力と販売促進効果が高まります。
特に「数量限定」や「週末限定」などの訴求は、FOMO(Fear of Missing Out=取り残されることへの恐れ)心理を刺激し即時購入を促進します。
販促施策の一環として、特定の売り上げ目標を短期間で達成したいときにも有効です。
新しい商品の露出機会になる
新商品は単体で販売してもなかなか注目を集めにくいものですが、セット販売の中に含めることで、その存在を自然と認知してもらえます。
購入者は気軽に試しやすく、気に入れば単品購入やリピートにつながります。
ショップページが充実する
セット商品を掲載することで、ショップのラインアップにバリエーションが加わり、視覚的な充実感を演出できます。
カテゴリーや特集ページを設けることで、回遊性や購買意欲の向上にも効果的です。
ギフト需要に対応できる
セット商品は見栄えが良く、ギフト用途に最適です。
母の日やクリスマスなどイベント時にギフトセットとして販売すれば、売り上げ拡大につながります。
包装やメッセージカードを加えることで差別化も可能です。
導入が容易である
Shopifyにはセット販売対応アプリがそろっており、簡単に導入できます。
商品の組み合わせや、割引設定、在庫管理までアプリ上で簡単に操作できるため、少ない初期投資でスピーディに始められます。
おすすめのアプリは後ほど紹介します。
Shopifyのセット販売のデメリット
Shopifyでセット販売を導入する際の主なデメリットは次のとおりです。
- 管理が複雑になりやすい
- 利益率が下がりやすい
- 顧客ニーズに対応しづらい
- 商品説明が複雑になりやすい
- 返品・キャンセル対応が煩雑になりやすい
- 標準機能だけでは実装が難しい
それぞれを詳しく解説します。
管理が複雑になりやすい
セット販売を導入すると、在庫管理や商品の組み合わせの調整が複雑化します。
単品とセットの両方で販売する場合、どちらかが売れると在庫を正しく「ひも付け」して管理しなければなりません。
さらに、セット化によってサイズや重量が変わり、送料計算が煩雑になるケースもあります。
利益率が下がりやすい
割引を前提とするセット販売は、単品販売と比べて1商品当たりの粗利が下がる傾向があります。
顧客が「セットの方がお得」と判断すれば、単品での売り上げが減るリスクもあります。
こうした利益構造の変化を事前にシミュレーションしておくことが重要です。
顧客ニーズに対応しづらい
セット商品はショップ側が組み合わせを決めるため、購入者にとって不要な商品が含まれる場合があります。
特に、ニッチなニーズやこだわりを持つ顧客にとっては柔軟性が低く、購買意欲を下げる要因となります。
定期的なセット内容の見直しやカスタマイズオプションの提供が有効です。
商品説明が複雑になりやすい
複数の商品を含むセット販売では、説明文が自然と長くなり情報量が増えます。
その結果、ユーザーが内容を把握しづらくなり、特にスマホ閲覧時に離脱を招くリスクがあります。
見出しや箇条書き、画像を活用して視認性を高める工夫が必要です。
返品・キャンセル対応が煩雑になりやすい
セット商品では「一部だけ返品したい」という要望が発生しやすく、処理が複雑です。
返品ごとに在庫調整や再販可否を確認する必要があり、管理負担が増大します。
円滑に対応するためには返品ポリシーの明確化とサポート体制の整備が不可欠です。
標準機能だけでは実装が難しい
Shopifyには標準でセット販売専用の在庫連動機能がなく、外部アプリの導入が必要です。
その分コストが発生し、運用に慣れるまで手間もかかります。
長期的に多数のバンドルを扱う場合は、アプリ依存による負荷を考慮する必要があります。
Shopifyセット販売のおすすめアプリ
Shopifyでセット販売を導入する際のおすすめのアプリは次のとおりです。
- Shopify Bundles(公式アプリ)
- Bundler
- バンドルビルダー
- Bundles.app
- シンプルセット販売|お手軽クロスセル
それぞれのアプリの特徴を紹介します。
Shopify Bundles(公式アプリ)

Shopify公式アプリ「Shopify Bundles」を使えば、管理画面から固定バンドルやマルチパックを簡単に作成できます。
お客様はサイズや色といったバリエーションを選択でき、商品ページも画像や商品オプションで自由にカスタマイズ可能です。
さらに、在庫はリアルタイムで更新されるため、売り越しの心配なく安心して運用できます。
このアプリは無料で利用できます。
Bundler

Bundlerは、定額割引や定率割引をはじめ、数量割引や段階的な割引を簡単に設定できるアプリです。
クラシックなセット販売からミックス&マッチ形式まで幅広いバンドルを作成でき、商品組み合わせや割引条件を柔軟にカスタマイズできます。
専用のランディングページやクロスセル機能を活用することで、コンバージョン率を高め、平均注文額の向上につなげられます。さらに、サブスクリプション商品ともシームレスに統合でき、継続的な収益モデルの構築にも役立ちます。
料金プランは無料プランの他、月額9.99ドルの「Premium」と月額19.99ドルの「Executive」があり、有料プランでは7日間の無料体験が利用可能です。
バンドルビルダー

バンドルビルダーは、購入者が自由に商品を組み合わせてオリジナルのバンドルを作成できるアプリです。
ギフトボックスやミックス&マッチなど、多様な販売形態に対応しており、特別感のある購入体験を提供できます。
使いやすいインターフェースとリアルタイムの在庫同期機能により、複雑なバンドル販売もシンプルに管理できる点が大きな特徴です。さらに、フルページバンドルや商品ページへの埋め込み表示により、視認性とコンバージョン向上を後押しします。
料金プランは、月額39ドルの「成長」と、月額299ドルの「プロ」があり、14日間の無料体験が利用可能です。
Bundles.app

Bundles.appは、商品バンドル販売を通じて売り上げと客単価を高められるアプリです。
マルチパックやキュレーションされたセット、段階的な価格設定などを簡単に作成でき、購入者に「好きな色やサイズを選んで組み合わせる」ミックス&マッチ形式のバンドル販売も提供できます。
在庫は高速で自動同期されるため、安心して販売を拡大できます。割引コードを使わずに価格調整が行える一方で、チェックアウト時に他のディスカウントコードも併用可能です。
料金プランは、月額19ドルの「Shopify shops」と月額39ドルの「Shopify Plus 30K」、月額99ドルの「Shopify Plus 100K」、月額199ドルの「Shopify Plus 100K+」があり、15日間の無料体験が利用可能です。
シンプルセット販売|お手軽クロスセル

日本製のシンプルなセット販売アプリで、クロスセルを簡単に実現できます。
ストア上で任意の商品セットを設定でき、セット数による追加課金のない固定料金制が特徴です。割引条件も柔軟に設定できるので、ストアの販売戦略に合わせた運用が可能です。
日本語による導入サポートがあるため、初めての方でも安心して利用できます。
料金プランは、月額14.99ドルの「Basic Plan」のみです。7日間の無料体験が利用可能です。
Shopifyでセット販売を成功させるポイント
Shopifyで、セット販売を成功させるための主なポイントは次のとおりです。
- ターゲットに合わせたセット内容を企画する
- 適正価格で「お得感」を明確に示す
- 在庫・物流への影響を考慮する
- 商品ページを分かりやすく作る
- Shopifyアプリを活用して運用を効率化する
- マーケティング視点を取り入れる
- 購入データの分析をセット販売改善に生かす
それぞれのポイントを詳しく解説します。
ターゲットに合わせたセット内容を企画する
成功するセット販売には、「誰に」「どんなシーンで」買ってもらうかを意識した企画が欠かせません。
例えば、スキンケア商品なら初心者に向けて「基本セット」、常連顧客に向けて「大容量セット」、プレゼント需要に向けて「ギフト用パッケージ」を用意すると効果的です。
また、購入者にとって「自分では思いつかなかった便利な組み合わせ」を提供することで価値が高まり、単なる割安感にとどまらない提案型販売として機能します。
適正価格で「お得感」を明確に示す
セット販売において価格設定は売り上げに直結する重要な要素です。
「単品合計よりいくら安いのか」を視覚的に示すことで購入判断がしやすくなり、割引率だけでなく「◯◯円お得」と金額で伝えるとより効果的です。
ただし、値引きが過剰になると利益率を圧迫するため注意が必要です。リピート割引(次回購入クーポン付きセットなど)や数量限定・期間限定で希少性を演出する方法も活用し、利益とお得感のバランスを取りましょう。
在庫・物流への影響を考慮する
セット商品を導入する際は、在庫管理と物流コストを必ずシミュレーションしましょう。
単品商品とバンドル商品で在庫が競合すると、売れ筋商品の在庫切れが発生し単品販売に悪影響を与えることがあります。SKUごとの状況を常に把握し、在庫同期機能を活用することが重要です。
また、梱包(こんぽう)サイズの変化で送料体系が変わることもあるため、配送ポリシーやシステム設定を事前に見直しておく必要があります。
商品ページを分かりやすく作る
セット商品ページは、「構成内容が一目で分かること」が大前提です。
全体写真と構成商品の個別写真を併せて掲載し、内容一覧や「合計金額と割引後価格」を並べて表示すれば、お得感と透明性を同時に伝えられます。
説明が長くなりがちな場合は、箇条書きや見出しタグ、画像や表を使って視認性を高めることが離脱防止につながります。
Shopifyアプリを活用して運用を効率化する
Shopify標準機能では「在庫同期」や「柔軟な割引設定」に限界があるため、アプリの活用が成功の鍵です。
特に、日本語サポートがあり在庫自動連動機能を備えたアプリなら、初心者でもスムーズに運用でき、管理負担を大きく軽減できます。
例えば、前述した「シンプルセット販売」など、日本向けのアプリを候補に入れ、費用や機能を比較検討すると安心です。
マーケティング視点を取り入れる
セット販売は売り上げ向上だけでなく、マーケティング施策としても有効です。
例えば、「初回購入限定」や「リピーター限定」、「会員限定」にすることでLTV(顧客生涯価値)の向上を狙えます。SNSキャンペーンや広告でも「セットならではのお得感」は強力な訴求材料になり、集客に直結します。
さらに「セット購入者への次回単品割引」などクロスセル施策と組み合わせれば、継続的な売り上げにつながる導線を構築できます。
購入データの分析をセット販売改善に生かす
販売後は、データ分析を通じて改善サイクルを回すことが重要です。
「どの組み合わせが売れているか」「どの顧客層が利用しているか」「平均客単価やリピート率はどうか」を把握することで、次の企画に反映できます。
Shopifyのレポート機能やGoogle Analytics、アプリ付属の分析機能を活用し、一時的な売り上げ増にとどまらず、長期的な成長戦略としてセット販売を位置付けましょう。