Shopifyでオンラインストアを運営していると、「安全で信頼性の高い決済方法を取り入れたい」「海外からの注文にもっと柔軟に対応したい」と感じることはありませんか?
そんなニーズに応えるサービスが、世界最大級のオンライン決済サービス「PayPal(ペイパル)」です。特に越境ECやキャッシュフローを重視する事業者にとって、PayPalは導入価値の高い決済手段といえるでしょう。
本記事では、PayPalの仕組みやメリット、Shopifyへの導入手順、注意点、よくある質問までを網羅的に解説します。
目次
PayPalについて
ShopifyでPayPalを導入するメリット
ShopifyでPayPalを導入する前の準備
ShopifyでPayPalを導入する手順
PayPalを導入するときのデメリット・注意点
PayPalの手数料について
ShopifyでPayPal決済の売り上げを受け取る方法
ShopifyでのPayPal利用に関するQ&A
PayPalについて
最初に、PayPalのサービス内容について詳しく紹介します。
・PayPalについて
PayPal(ペイパル)とは、アメリカ発のオンライン決済サービスで、世界中で広く利用されています。
利用者は、銀行口座やクレジットカードの情報を事業者に開示することなく、安全に決済を行えます。
現在では、ECサイトでの商品購入はもちろんのこと、フリーランスによる請求や送金など、さまざまなシーンで活用されています。
・PayPalの仕組み
PayPal決済では、購入者がオンラインストアの支払い画面でPayPalを選択し、事前に登録したクレジットカードや銀行口座から希望の支払い方法を選んで承認を行います。
承認後、PayPalが指定の支払い方法から代金を引き落とし、取引が即座に完了します。
通常は数分以内に、売り手のPayPalアカウントに代金が反映されます。売り手はその残高を確認の上、自身の銀行口座へ出金可能です。
・PayPalの支払い方法
PayPalでは、あらかじめ登録しておいたクレジットカードやデビットカード、銀行口座、またはPayPal残高から、希望の支払い方法を選択して決済できます。
決済時に情報を再入力する必要がなく、選択だけでスムーズに支払いが完了する点が大きな利点です。
ShopifyでPayPalを導入するメリット
ShopifyにPayPalを導入する主なメリットは、ストア側・購入者側それぞれに多数あります。
- 【ストア側】海外顧客にも対応しやすい
- 【ストア側】決済が即時反映される
- 【ストア側】情報漏えいリスクを軽減できる
- 【購入者側】複数の支払い方法をまとめて管理できる
- 【購入者側】外貨での決済が簡単にできる
- 【購入者側】サポートが充実している
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
・【ストア側】海外顧客にも対応しやすい
PayPalは世界中で利用されているオンライン決済サービスであり、特に英語圏や欧米諸国では高い信頼を得ています。
ShopifyにPayPalを導入することで、クレジットカード以外の決済手段を求める海外ユーザーにも対応できるため、カゴ落ちの防止や購入率の向上が期待できます。
また、多通貨決済や言語切り替えに対応している点も、越境ECを運営する事業者にとって大きなメリットです。
・【ストア側】決済が即時反映される
PayPalは決済完了と同時に売上金が即座にPayPalアカウントへ反映されます。キャッシュフローを重視する個人事業主や小規模ストアにとっては大きな利点です。
ストアは顧客の購入から数分以内に入金状況を確認でき、Shopify管理画面でも注文ステータスが即時更新されるため、在庫引き当てや発送業務にも迅速に対応できます。
・【ストア側】情報漏えいリスクを軽減できる
PayPalを経由して決済が行われるため、ストア側はクレジットカード情報や銀行口座情報を直接取り扱う必要がありません。
この仕組みにより、情報漏えいのリスクが大幅に減少し、セキュリティ対策にかかる手間やコストが削減できます。
特に個人や中小規模のストアでは自社でのセキュリティ強化が難しいケースが多いため、信頼できる外部決済手段を導入することは顧客との信頼構築につながります。
・【購入者側】複数の支払い方法をまとめて管理できる
PayPalにクレジットカードやデビットカード、銀行口座を登録しておけば、複数の支払い方法をひとつのアカウントでまとめて管理できます。日常的にネットショッピングを利用するユーザーにとって非常に便利な仕組みといえます。
決済時には登録済みの支払い方法から選ぶだけでスムーズに手続きでき、例えば「プライベートではクレジットカード」「家計用には銀行口座」といった使い分けも可能です。
・【購入者側】外貨での決済が簡単にできる
PayPalを利用すれば、海外通販でも通貨の違いを気にせずスムーズに決済できるため、初めての海外購入でも安心して利用できます。
PayPalでは現地通貨から日本円への換算は自動で行われるため、煩雑な手続きは一切不要です。
また、決済前に日本円での支払額が明確に表示されるため、「いくら請求されるのか」が事前に分かり、安心感につながります。
・【購入者側】サポートが充実している
PayPalは世界中で利用されている決済サービスであり、サポート体制が非常に整っている点が大きな魅力です。初めての利用でも安心して使えるよう、充実した支援が用意されています。
公式ヘルプセンターには、よくある質問やトラブル時の対処法が詳しく掲載されており、24時間対応のチャットボットやメールでの問い合わせも可能です。日本語でのサポートにも対応しているため、英語が苦手な方でも安心して利用できます。
さらに、不正請求やトラブルがあった際には、取引内容を調査して返金を仲介してくれる「買い手保護制度」も用意されています。
ShopifyでPayPalを導入する前の準備
ShopifyストアにPayPalを導入するにあたっては、事前にいくつかの設定と登録作業が必要です。具体的な準備項目は次の三つです。
- PayPalビジネスアカウントを作成する
- 本人確認を行う
- 銀行口座を登録する
それぞれの手順について詳しく解説します。
・PayPalビジネスアカウントを作成する

まだPayPalのビジネスアカウントを持っていない場合は、Shopifyでの決済に利用するために、ビジネスアカウントの開設が必要です。
PayPalの公式サイトから「新規登録」を選び、ビジネスアカウントを作成しましょう。メールアドレスや事業情報(屋号・所在地・電話番号など)を入力して登録を進めます。
既にパーソナルアカウントを持っている場合は、管理画面から「ビジネスアカウントへのアップグレード」が可能です。
・本人確認を行う
PayPalビジネスアカウントを作成した後は、本人確認の手続きが必要です。管理画面にログインし、指示に従って本人確認書類を提出しましょう。
個人事業主の場合は、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書、法人の場合は、登記簿謄本や代表者の本人確認書類など、業種や事業形態に応じた書類の提出が求められます。
審査が完了し、本人確認が承認されると、送金・受け取りなどの全ての機能が利用可能になります。
・銀行口座を登録する
PayPalで売り上げを出金するには、事前に銀行口座を登録しておく必要があります。
まずはPayPalの管理画面にログインし、「ウォレット」または「銀行・カード」セクションから登録を進めましょう。
登録後、数日以内にPayPalから数円程度のテスト入金が行われます。その金額を確認して、PayPal上で正確な入金額を入力すれば認証が完了し、銀行口座の登録が正式に完了します。
ShopifyでPayPalを導入する手順
ShopifyにPaypalを導入する手順は次のとおりです。
- Shopifyにログインして「設定」を開く
- 「決済」セクションでPayPalを探す
- PayPalアカウントにログインして連携する
それぞれの手順を詳しく説明します。
・Shopifyにログインして「設定」を開く

まずはShopifyの管理画面にログインします。
ログイン後、左下にある「設定」メニューをクリックしましょう。
設定ページでは、ストアの基本情報や配送、税金、決済など、運営に関わる各種項目が一覧で表示されます。
この中から「決済」を選択すると、クレジットカードやPayPalなどの決済方法を追加・変更する画面に進みます。
・「決済」セクションでPayPalを探す

決済設定画面には、現在有効な決済方法と、利用可能な決済プロバイダーが一覧表示されます。
その中から「PayPal」の項目を探しましょう。一般的には「PayPal Express Checkout」が表示されており、その右側に「アカウントを接続する」または「有効にする」といったボタンが表示されます。
なお、PayPalはShopifyに標準で統合されているため、別途アプリのインストールは不要です。
・PayPalアカウントにログインして連携する

「アカウントを接続する」ボタンをクリックすると、PayPalのログイン画面が表示されます。
ここでPayPalビジネスアカウントのメールアドレスとパスワードを入力し、Shopifyとの連携を許可してください。
認証が完了すると、Shopify上でPayPalが決済手段として有効化され、すぐに利用を開始できます。
PayPalを導入するときのデメリット・注意点
ShopifyにPaypalを導入する際の主な注意点は次のとおりです。
- 返金請求やアカウント制限のリスクがある
- 為替手数料はPayPal独自のレートが適用される
- 銀行口座への出金には時間がかかる
- 日本ではPayPalがそこまで普及していない
- 支払い画面がShopifyから離れる
それぞれを解説します。
・返金請求やアカウント制限のリスクがある
PayPalでは、購入者から返金の申し立てが行われると、PayPalの管理下で調査とやり取りが開始され、解決するまで該当の売上金が一時的に保留される点に注意が必要です。
対応が不十分だった場合はクレームへと発展し、一定件数を超えるとアカウントに制限がかかるリスクがあります。アカウントが制限されると、売り上げの引き出しや取引自体が停止されることもあり、事業に大きな影響を与える恐れがあります。
こうしたリスクを回避するためには、返金ポリシーをあらかじめ明確に提示し、顧客からの問い合わせやトラブルにも迅速かつ丁寧に対応できる体制を整えておくことが重要です。
・為替手数料はPayPal独自のレートが適用される
海外からの注文で現地通貨による決済が発生した場合、PayPalは日本円への換算を自動的に行いますが、その際に適用されるのはPayPal独自の為替レートです。
このレートには一定の為替手数料が上乗せされており、一般的な市場レートよりも割高になる傾向があります。そのため、売り上げの受取金額が目減りする可能性がある点には注意が必要です。
為替レートの設定はPayPalの管理画面から一部調整できる項目もあるため、事前に仕様や手数料率を確認しておくと安心です。
・銀行口座への引き出しには時間がかかる
PayPalでは、顧客からの支払いは即時にアカウントへ反映されますが、その資金を自身の銀行口座に引き出すには、通常3〜6営業日程度を要します。
たとえ売り上げが発生していても、実際に現金化できるまでにはタイムラグがあるため、資金繰りには十分な余裕を持つ必要があります。
特に、仕入れや広告費の支出が重なるキャンペーン期間や月末などでは、出金スケジュールを計画的に管理しないと、運転資金が一時的に不足するリスクもあります。
こまめな出金申請や、自動出金設定の活用など、自社の運用スタイルに合わせたルールをあらかじめ整備しておくことが重要です。
・日本ではPayPalがそこまで普及していない
日本ではPayPalが欧米ほど広く普及しておらず、日常的に利用している人は少数派です。そのため、購入者にとっては「使い方が分からない」「アカウント作成が面倒」といった心理的なハードルが存在します。
特にネット決済に不慣れな購入者の場合、決済途中で離脱してしまう可能性もあります。
こうした背景から、PayPalを導入する際には、他の決済手段と併用し、選択肢を広げておくことが重要です。
・支払い画面でShopifyから離れる
PayPalでの決済を選択すると、購入者はShopifyのストア画面から外部のPayPal決済ページへ遷移することになります。
この移動により、Shopifyの一貫したブランドデザインやカート体験が中断されるため、購入者の安心感や信頼性に影響を与えることがあります。特にモバイル環境では、画面遷移や読み込み時間が煩雑に感じられやすく、購入完了前に離脱してしまうリスクが高まります。
そのため、PayPalを導入する際は、導線の分かりやすさや補足説明の表示など、購入者が不安を感じない設計が重要です。
PayPalの手数料について
Paypalにおける主な手数料は次のとおりです。
- 国内取引の決済手数料
- 出金時の手数料
- 通貨換算時の手数料
それぞれの手数料について詳しく解説します。
・国内取引の決済手数料
PayPalでは、購入者と事業者の双方が日本国内に登録されている場合、その取引は「国内取引」として分類されます。
この場合、事業者は1件の決済ごとに「3.6%+40円」の手数料をPayPalに支払う必要があります。
例えば、1万円の商品が売れた場合、手数料として400円が差し引かれ、実際の受取額は9,600円です。
高単価の商品を取り扱う場合や、利益率の低いビジネスモデルでは、この手数料が利益を圧迫する要因となるため、あらかじめ価格設定や原価設計に織り込んでおくことが重要です。
・出金時の手数料
PayPalに入金された売り上げを日本の銀行口座に引き出す際、出金金額が5万円未満の場合には250円の手数料が発生します。一方、5万円以上の出金であれば手数料は無料です。
また、米国の銀行口座へ出金する場合は、一律3%の出金手数料がかかります。
少額の売り上げを頻繁に出金していると、手数料の累積により収益が目減りするリスクがあります。そのため、資金が必要なタイミングを踏まえて、出金の金額と頻度を計画的に調整することが大切です。
・通貨換算時の手数料
PayPalを利用した海外取引では、通貨換算時に手数料が発生します。この手数料は、送金者と受取者のどちらが負担するかによって異なります。
- 送金者が負担する場合:通貨換算手数料は4.00%
- 受取者が負担する場合:通貨換算手数料は3.00%
例えば、海外の顧客から米ドルで支払いを受け取り、日本円に換算して売り上げを回収する場合、受け取り金額から最大3%が差し引かれます。
越境ECや海外販売を積極的に行うショップでは、為替手数料が積み重なると利益に影響する可能性があります。通貨設定や換算タイミングを含めて事前に戦略を立てておくことが重要です。
詳細については、PayPalの公式手数料ページをご参照ください。
ShopifyでPayPal決済の売り上げを受け取る方法
ShopifyストアでPayPal決済を導入した際、売上金をどのように回収・管理するかは重要な運営ポイントです。PayPalでの受け取りから出金までの流れは次のとおりです。
- 顧客からの支払いはPayPalアカウントに入金される
- 売り上げを銀行口座へ出金する
- 自動出金設定を活用して管理の手間を減らす
それぞれを解説します。
・顧客からの支払いはPayPalアカウントに入金される
Shopify上で顧客がPayPalを利用して決済を行うと、代金はまず事業者のPayPalビジネスアカウントに入金されます。
ただし、この売上金は即座に銀行口座へ振り込まれるわけではなく、一時的にPayPalアカウントの「残高」として保留される仕組みです。
銀行口座への出金は別途手続きが必要なため、資金繰りや出金のタイミングを計画的に管理することが重要です。
・売り上げを銀行口座へ出金する
PayPalアカウントに入金された売上金は、そのままでは銀行口座には反映されません。
現金化するには、PayPalの管理画面から出金手続きを行う必要があります。
「ウォレット」もしくは「支払いと受け取り」メニュー内で銀行口座を選択し、引き出したい金額を入力することで手続きが完了します。
・自動出金設定を活用して管理の手間を減らす
出金操作を毎回手動で行うことが手間に感じる場合は、PayPalの自動出金機能を活用すると便利です。
この機能を有効にすると、あらかじめ設定した間隔や条件を満たしたタイミングで、自動的にPayPal残高が登録済みの銀行口座へ送金されます。
出金漏れを防ぎながら、資金管理の効率化にもつながるため、定期的な売り上げが発生するストアには特におすすめです。
特に、Shopifyで日々多数の取引があるストアや、複数通貨を扱う越境ECを運営している事業者にとっては、業務負担の軽減とキャッシュフローの安定化に効果的です。
ShopifyでのPayPal利用に関するQ&A
最後に、ShopifyでPaypalを利用する際のよくある質問とその回答を紹介します。
・PayPalをより安全に利用するにはどうすべきか
PayPalを安全に利用するには、まず二段階認証(2FA)を有効に設定することが基本です。
ログイン時にワンタイムコードの入力を求められることで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。
また、不審なメールや偽サイト(フィッシング詐欺)にも十分な注意が必要です。
PayPalを装ったメールでパスワード入力を促す詐欺も確認されており、こうした場合はメール内のリンクを使用せず、必ず公式サイトから直接アクセスしてログインするようにしましょう。
・ShopifyでPayPalがうまく連携できない原因は何か
ShopifyでPayPalと正常に連携できない場合、最も多い原因のひとつがPayPalアカウントがビジネスアカウントではないことです。
個人アカウントではShopifyとの接続が制限されているため、必ずビジネスアカウントに切り替えておく必要があります。
また、既に別のShopifyストアと同じPayPalアカウントを接続している場合も、連携エラーが発生することがあります。
このような場合は、PayPal側で既存の連携を解除した上で、Shopify管理画面から改めて接続を行ってください。
・PayPalで複数通貨の支払いを受け取る方法はあるか
PayPalで海外からの支払いを受け取るには、あらかじめ取引通貨をPayPalアカウントに追加しておく必要があります。
通貨が未登録の状態で米ドルやユーロなどの注文がShopify経由で入ると、PayPal側で決済エラーとなり、注文が自動キャンセルされてしまう恐れがあります。
主要な外貨には幅広く対応していますが、為替換算時にはPayPal独自のレートや通貨換算手数料が適用されるため、事前に通貨ごとの手数料体系も確認しておくことが重要です。
・PayPalはアカウントがなくても利用できるか
ShopifyなどのオンラインストアでPayPal決済を利用する場合、基本的には購入者側にもPayPalアカウントの作成が求められます。
ただし、PayPalが提供する「ゲストチェックアウト」機能が有効な場合に限り、アカウント登録なしでクレジットカードやデビットカードによる支払いが可能です。
この機能の可否は、事業者のPayPalビジネスアカウントの設定状況や、購入者の国・通貨・取引条件によって変動します。
なお、日本国内の取引ではゲストチェックアウトが利用できないケースが多いため、原則としてPayPalアカウントの取得が必要と考えておくことが安全です。
・PayPal以外の決済を希望する顧客への対応
全ての顧客がPayPalに慣れているわけではありません。中にはアカウントを持っていない、あるいはログインや外部連携に抵抗があるといった理由から、PayPal決済を避けたいと考える人が一定数存在します。
そのため、Shopify Paymentsとの併用が有効です。Shopify Paymentsを導入すれば、VisaやMastercardなどの主要なクレジットカードに加え、Apple PayやGoogle Payといったモバイル決済にも対応でき、より多様なニーズに応えられます。